- 土地換地処分に係る清算金(分離譲渡所得)を確定申告期限までに申告していなかった請求人に対する重加算税を審判所が取り消す(平成30年1月11日裁決・名裁(所)平29第9号)。
- 審判所、支払調書等を含む清算金に係る書類等を破棄する行為や清算金を秘匿する行為は認められず。
請求人は、土地区画整理組合から換地不交付に関する清算金を振込入金により受領するとともに、組合の理事長名で送付された「清算交付金に伴う確定申告について」(以下「お知らせ」)及び「不動産等の譲受け対価の支払調書」(以下「支払調書」)を受領した。お知らせには、清算金は分離譲渡所得に該当するため、所得税の確定申告の手続きが必要である旨などが記載されていたものの、請求人は申告期限までに確定申告書を提出しなかった。税務調査を踏まえ期限後申告をした請求人に対して原処分庁は、請求人が申告期限までに確定申告書を提出しなかったことについて重加算税の賦課要件を満たすと判断した。これを不服とした請求人は、直接審査請求により重加算税の取り消しを求めた。
審判所は、請求人が清算金を受領した事実を秘匿するために確定申告会場に行った際に、あえてお知らせや支払調書を持参しなかったとの事実を認めることはできないと指摘。仮に原処分庁主張のように請求人が確定申告会場へお知らせや支払調書を持参しなかった事実が認められるとしても、清算金に関する確定申告をすることは可能であったこと、支払調書が原処分庁に提出されることを容易に察し得る状況にあったことを踏まえれば、請求人がこれらの書類を確定申告会場へ持参しなかったことについて清算金の受領の事実を秘匿するための行動と評価するのは困難と言わざるを得ないとした。また、請求人に対する調査全体をみたとき、請求人が清算金を受領した事実やそれに関するお知らせ等の資料を隠ぺいしようとする態度を一貫してとっていたとか、調査に非協力的な態度をとったとまではいえないと指摘した。そして、請求人はお知らせ及び支払調書を含む清算金に係る書類を破棄するなどの行為をしていないこと、清算金が振り込まれた口座からの出金はなく清算金受領後にこれを秘匿しようとするような行為をしていないことが認められることから、請求人が当初から申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたことをうかがわせるような事実は認められないと判断したうえで、重加算税の賦課要件は満たさないと結論付けている。