• 会社法制(企業統治等関係)部会で、経済産業省が、執行役員に「執行役」と同等の規律を課す案を提案。
  • 現行法人税法上、執行役員は基本的に「役員」には該当しないが、仮に執行役同様の規律の対象となれば、役員給与税制の適用の要否など法人税法上の取扱いに影響も。

執行役員制度には取締役会のスリム化や業務執行に対する責任の明確化のほか、ポジション名に「役員」と付くことによるモチベーションアップなどの効果が期待されるが、名称には「役員」と付いても、会社法上の定義はなく、あくまで重要な使用人に過ぎない。一方、会社法418条で定義される指名委員会等設置会社の「執行役」は、取締会決議により選・解任され、取締役会決議によって委任された事項について会社業務を実行する役職であり、取締役同様、会社に対して善管注意義務および忠実義務を負い、株主代表訴訟の対象にもなる。

このようにともに経営陣の一角として会社の業務執行を担っているにもかかわらず、執行役員が執行役のような会社法上の責任を何ら負っていないことを問題視する声もある中、6月20日に開催された法務省の法制審議会・会社法制(企業統治等関係)部会の第13回会議では、経済産業省から「実務上執行役員等として選任されている者のうち、業務執行取締役と同等程度の特に重要な職責を果たす者について、例えば、指名委員会等設置会社における執行役と同様、監査役設置会社や監査等委員会設置会社においても、取締役会の決議によって執行役として選任することを認めた上で、会社法上一定の規律の対象とする、執行役として選任されている者以外についても同等の権限を有する者については同等の規律の対象とする等、会社の機関として会社法上の位置付けを与えることを検討してはどうか」との提案が行われている。

この提案は「中間試案」には入っていないため会社法改正案に盛り込まれるかどうかは微妙だが、もし盛り込まれればその影響は法人税法にも及ぶ可能性がある。現行法人税法上の役員は「法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人……」等とされている(法法2条十五)。すなわち「執行役」はその地位を有するだけで法人税法上の役員に該当することになる。仮に執行役員の法的な位置付けが執行役に近いものとなった場合、執行役員が法人税法上の「役員」に該当するか否かが議論されることになりそうだ。仮に法人税法上の役員となれば、役員給与規制の対象にもなるだけに、影響は極めて大きい。法制審議会の議論の行方が注目される。