- マンション管理組合による共用部分(屋上)のアンテナ賃貸収入の課税関係が問題となった税務訴訟で、納税者側が敗訴(東京地裁平成30年3月13日判決)。
- 共用部分(屋上)に設置したアンテナ一式に関する賃貸収入はマンション管理組合に法人税の納付義務があると判断(賃貸収入は各区分所有者には帰属せず)。
本件は、マンションの区分所有者全員で構成される団体である本件管理組合(納税者)がマンション共用部分(屋上)をアンテナ一式に要するスペースとして携帯電話会社に賃貸して得た収入の課税上の取扱いが問題となった税務訴訟である。主な争点となったのは、①本件管理組合が法人税法上の人格のない社団等に当たるか否か、②マンション共用部分の一部の賃貸が本件管理組合の行う収益事業に当たり、本件管理組合の収益事業から生じた所得が存在するといえるかという点である。この点に関し本件管理組合は、本件管理組合は人格のない社団等(権利能力のない社団)には当たらないと主張したほか、共用部分の賃料は各区分所有者に帰属するため、この各区分所有者(帰属者)に所得税等が課されるべきであるから、本件管理組合には法人税を課すべきではないという主張を展開した。
裁判所はまず、本件管理組合は権利能力のない社団であり、法人税法上の人格のない社団等に当たるものというべきであるとした。
そしてマンション共用部分の賃貸収入の課税関係について裁判所は、本件賃貸は権利能力のない社団である本件管理組合が団体として行う活動としての実質を有するものといえるから、法人税法上、本件管理組合が不動産貸付業という収益事業を行っていると認めるのが相当であるとした。
また、裁判所は、本件管理組合が主体となって行われた収益事業から生じた収益である賃貸収入はそれが本件管理組合の構成員から分離されて、本件管理組合の団体としての活動目的に沿うよう管理・保管されていることも勘案すれば、本件管理組合の所得を構成するべきであると指摘したうえで、本件管理組合が本件賃貸収入による所得について法人税の納付義務を負うことになると判断した。
なお、国税庁は、マンション管理組合がその屋上部分を貸し付けることで得るアンテナ設置料収入は法人税の課税対象となる旨を質疑応答事例のなかで明らかにしている。今回の裁判所の判断内容は、国税庁の取扱いを支持したものといえそうだ。