• 個人事業者の建物や設備等についても小規模宅地特例と同様の特例を設ける“個人事業者の事業承継税制”が31年改正で本格検討へ。
  • 過去4年間「検討課題」として先送りされてきたものの、30年改正で企業向けの事業承継税制が大幅に拡充されたことを踏まえると、企業と個人事業者のバランスを図る観点からも実現の可能性。

平成30年度税制改正では事業承継税制が大幅に拡充されたが、その一方で、平成27年度から4年連続で経済産業省(中小企業庁)の税制改正要望に盛り込まれたものの、そのたびに見送られてきたのが“個人事業者の事業承継税制”だ。これは、個人事業者の建物や設備等についても小規模宅地特例と同様の特例を設けることを念頭に置いた措置だが、平成27~30年度税制大綱には毎年「検討事項」として下記の文章が掲載されている。

経済産業省は、“個人事業者の事業承継税制”を「個人事業者の事業用資産に係る事業承継時の負担軽減措置の創設」として平成31年度税制改正要望項目に挙げているが、本誌取材によると、今回はようやく本格的な検討の俎上に載ることになりそうだ。

その背景には、平成30年度税制改正で企業向けの事業承継税制が大幅に拡充されたということがある。下記の過去の税制改正大綱に「法人は株式等が散逸して事業の円滑な継続が困難になるという特別の事情により特例が認められている」とあるように、企業と個人事業者の事業承継は同列で見られない部分はあるものの、個人事業者においても事業承継問題が深刻化しているという実態がある中、企業向けの事業承継税制のみを大幅に拡充し、個人事業者の事業承継対策は何も講じないとなれば「不公平」との指摘が出てくることも考えられる。

“個人事業者の事業承継税制”が平成31年度税制改正で実現する可能性は十分にあると言えそうだ。

 個人事業者の事業承継に係る税制上の措置については、現行制度上、事業用の宅地について特例措置があり、既に相続税負担の大幅な軽減が図られていること、事業用資産以外の資産を持つ者との公平性の観点に留意する必要があること、法人は株式等が散逸して事業の円滑な継続が困難になるという特別の事情により特例が認められているのに対し、個人事業者の事業承継に当たっては事業継続に不可欠な事業用資産の範囲を明確にするとともに、その承継の円滑化を支援し代替わりを促進するための枠組みが必要であること等に留意し、既存の特例措置のあり方を含め、引き続き総合的に検討する。