- 審判所は、請求人が他の企業グループとのアライアンスに基づく安価な料金を超えて自社の外国子会社に支払った料金の寄附金該当性が争われた事案で、原処分庁の寄附金に係る法令解釈を一蹴。
- 自社の外国子会社への料金の支払に経済合理性があることから、寄附金には該当しないと判断。
本事案は、国外での貨物業務に係る料金について、請求人が外国子会社(国外関連者)に支払った料金(フルコスト水準価格:変動費用水準、固定費用水準、利益水準により決定)と他の企業グループとのアライアンスに基づいて設定した料金(レシプロ料金:変動費用相当部分のみカバー)との差額が、請求人から外国子会社への寄附金に該当するか否かが争われたもの。
審判所は、当該差額について、アライアンスに基因して請求人グループ内で生じる利益の移転を解消するために支払われたものであると認定。利益の移転が生じることを放置しなかったことは通常の経済取引として自然な行為であり、それを解消することに経済合理性があると指摘したうえで、金額算定にも一定の妥当性が認められ、対価性も認められることから寄附金に該当しないと判断している。
本事案で注目されるのは、審判所が寄附金に係る原処分庁の解釈を退けていることだ。
原処分庁は、寄附金該当性が否定される「経済合理性」の範囲は、法基通9-4-1に定めるような親会社として今後より大きな損失を被ることになるという場面においてこれを回避するためにやむを得ずしたものなど、例外的な場面に限られると主張。単に、事業経営上の必要性や合理性があるというような場合にまで、広く含まれるものではないとした。
これに対し審判所は、法人税法37条7項にいう寄附金とは、民法上の贈与に限らず、経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡または利益の供与をいうのであり、「経済的にみて贈与と同視し得る資産の譲渡または利益の供与」とは、金銭その他の資産または経済的利益を対価なく他に移転させる場合で、その行為について通常の経済取引として是認できる合理的な理由が存在しないものを指すと指摘。その上で法基通9-4-1に定めるような相当の理由が認められるようなものを含め、寄附金に該当するか否かは、当該法令解釈に照らして判断されるべきものであり、当該差額は請求人子会社の想定損失額の補填を目的とするものとは認められないと判断した。