• 借入先である海外法人が納税者の関連者等に該当すると判断して過大支払利子税制の適用を認める(平成30年8月27日裁決)。
  • 審判所、海外法人の役員の2分の1以上を納税者の役員が兼務していることなどを指摘。納税者が海外法人の事業方針を実質的に決定できる関係があったことから、海外法人は関連者等に該当すると判断。

過大支払利子税制とは、関連者純支払利子等のうち調整所得金額の一定割合(50%)を超える部分を損金不算入とする制度である。本件で問題となったのは、海外法人(シンガポール所在)が内国法人である納税者の関連者等に該当するか否かという点である。

事実関係をみると、海外法人からの借入金(約68億円)があった納税者は、借入金に係る支払利息を損金に算入していたものの、海外法人に対する利息は未払い(約15億円)であった。なお、海外法人の役員3名は、納税者の役員も兼務していた。課税当局は、海外法人が納税者の関連者等に該当すると判断して、借入金に係る支払利息の一部を損金不算入とする課税処分を行った。これを不服とした納税者は、納税者の役員と海外法人の役員を兼任していた者(2名)は納税者の経営実務に一切関与しておらず、勤務実態もない名義上の役員であることなどから、納税者と海外法人との間には「いずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係」(措令39条の13の2⑧三)がないと指摘したうえで、海外法人は納税者の関連者等に該当しない旨を主張していた。

これに対し審判所は、海外法人の役員の2分の1以上が納税者の役員を兼務していることから、一方の法人(納税者)が他方の法人(海外法人)の事業方針を実質的に決定できる関係があったものと推認できるとした。また、審判所は、納税者は海外法人からの多額の借入金(約68億円)及び未払利息(約15億円)があるにもかかわらず、海外法人が法的な回収方法を採らずに休眠状態となっていることを指摘。これは借手と貸手の間に支配関係がなければ考え難いことから、一方の法人(納税者)が他方の法人(海外法人)の事業方針を実質的に決定できる関係があったものと強く推認できるとした。以上の点などを踏まえ審判所は、納税者と海外法人との間には事業方針を実質的に決定できる関係があったと認められることから、海外法人は納税者の関連者等に該当すると判断したうえで、過大支払利子税制の適用を認めた。