• 肉用牛の売却所得の免税特例適用を目的とした仮装行為の有無が争われた事件で、東京地裁は2月19日、納税者は少なくとも「未必的」には取引の実質を認識していたとし、課税処分を支持。
  • また、役員退職給与について「具体的な貢献の態様及び程度」が不明確とし、「不相当に高額」と認定。

措置法上、一定の要件を満たす肉用牛を農水大臣が指定した農協等に委託して売却した場合にその売却所得を免税とする特例(措法67条の3①二)があるが、本訴訟の一つ目の争点となったのが、肉牛等の販売会社(原告)が同特例の適用を目的に農協等への委託売却を装ったとして課された青色申告の承認取消、法人税等の更正及び重加算税の賦課決定の各処分の是非である。東京地裁は、本件特例の適用要件を「受託者である指定農協等が主体的に売買及び価格形成に関与し、取引価格の公正かつ適正さが担保された売却であること」とした上で、原告が行った取引では農協の役割は形式的なものにとどまり、実態は原告と原告のグループ会社の直接取引であるとした。また、原告による「委託売却に該当しないことを認識していなかった」などとの主張に対しても「少なくとも未必的には認識していた」とし、原告の行為は法人税法及び国税通則法上の「仮装」に当たると判断、課税処分を支持している。

もう一つの争点が、原告の元代表者への退職給与が不相当に高額とした法人税等の再更正及び過少申告加算税の賦課決定処分の是非だ。東京地裁は国の用いた平均功績倍率法(平均功績倍率×最終報酬月額×勤続年数)による算定方法(平均功績倍率算定のための同業類似法人の抽出基準を含む)及び算定額は合理的とした上で、元代表者の最終月額報酬額110万円、勤続年数34年に平均功績倍率を乗じ、適正な役員退職給与額を3964万4000円と認定。これに対し原告は、元代表者の功績からすれば、最終月額報酬額(110万円)は少ないなどと主張したが、東京地裁は元代表者の原告の規模拡大等への貢献は認めつつ、①原告において元代表者の役員報酬が最高額だった、②平成10年頃からは現代表者が飼養管理部門、原告元代表者が財務、金融、人事等の管理部門を中心に担当し、重要事項については2人で協議して決定していた、③規模拡大等への元代表者の具体的な貢献の態様及び程度は必ずしも明らかではないとし、在職期間中における功績の程度を反映していると解される最終月額報酬額が元代表者に当てはまらないと認めるには足りないとして原告の主張を斥けている。