- 無効利息に係る過年度法人税の還付を求める事案で、令和2年7月2日、国が逆転勝訴。
- 最高裁は、従前の裁判例と同様に、過年度の遡及的修正を認めず、厳しい実務が継続される可能性大。
本件は、いわゆるグレーゾーン金利(利息制限法の上限利率を超える部分)が無効である旨を判示した最高裁判決を受けて、貸金業者X社の破産管財人が、国に対して過年度に納付した法人税の還付を求めた事案である。
X社の破産管財人は、X社が各事業年度において益金算入していた制限超過利息等の一部が、過払金(不当利得)として顧客に返還すべきものであったことが事後的に確定したため、各事業年度の法人税の額が過大であったとして更正の請求を行ったが認められず、訴訟を提起するに至った。
争われたのは、制限超過利息を受領した事業年度に遡って益金の額を減額することが認められるか、あるいは、過払金返還請求権に関する損失はそれが確定した事業年度の損金として処理(前期損益修正)されるべきかという点だ。
一審の大阪地裁は、類似事案である平成26年の旧武富士事件と同様に、前期損益修正の処理が法人税法22条4項に規定する公正処理基準に該当すると判示して、過年度に遡って益金の額を減額することを認めなかった。ところが、控訴審である大阪高裁は一転、破産会社には継続企業の公準が妥当しないなどの各事情をふまえて、過年度に遡って修正する処理を認めるという従前とは異なる判断を下し、国が敗訴した。
最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)はこの控訴審判決を破棄し、「法人税の課税においては、事業年度ごとに収益等の額を計算することが原則である」として、本件のような場合であっても「前期損益修正によることが公正処理基準に合致する」との見解を示した。そして、法人税法等においては、本件のような場合に前期損益修正と異なる取扱いを許容する特別の規定は見当たらず、企業会計上も、過年度の収益を減額させる計算をすることが公正妥当な会計慣行として確立していることはうかがわれないことから、「法人税法が上記原則に対する例外を許容しているものと解することはできない」と判断した。
継続企業の公準が崩壊した破産会社に過年度の遡及的修正が認められないのは酷であると指摘する声が以前から挙がっていたが、今回、最高裁が、破産会社であっても前期損益修正による処理が原則との見解を明確に示したことで、従来どおりの厳しい実務が継続されることになりそうだ。