- 株主からの議事録等の閲覧請求事件。東京地裁は、会社が株主の請求を代表取締役追出しの権利濫用と判断して拒絶したことは善管注意義務違反があるとはいえないとし、株主の請求を棄却(令和元年12月20日)。
本件は被告会社の株主である原告が、被告会社に対し株主総会議事録及び計算書類の閲覧及び謄写を求めるとともに、被告会社の代表取締役(被告)が原告の議事録等の閲覧等の請求を合理的理由なく拒絶したことは被告会社に対する善管注意義務違反であるとして、会社法429条1項に基づき慰謝料等を請求したものである。
本件は親族間での争いとなっており、前代表取締役の死亡により、その妻が被告(前代表取締役の子(妹)の夫)に株式を贈与したが、詐欺により取り消すとの意思表示を示すなど、被告会社の支配権を巡る争いが背景にある。株主である原告(前代表取締役の子(兄))は、前代表取締役の死亡退職金や工場の土地売買について違法性や不当性がなかったかどうか調査するためであると主張。被告の追出しが目的ではなく、権利濫用ではないなどとしていた。
東京地方裁判所(諸井明仁裁判官)は、原告の請求する議事録等については、被告会社が所持しないもの、請求理由に照らして必要な範囲を超えるもの、又は、すでに謄写若しくは謄本交付がされたものであるため、原告の被告会社に対する請求には理由がないというべきであるとした。
また、原告は、被告が議事録等の閲覧等の請求に応じなかったことは善管注意義務違反になると主張するが、会社は、株主総会議事録及び計算書類等については、株主の請求が権利濫用であった場合に、その閲覧又は謄写若しくは謄本交付請求に応じないことができ、会計帳簿等に関しては、これに加えて会社法433条2項各号の除外事由に該当する場合に閲覧、謄写請求に応じないことができることからすると、会社の取締役には、善管注意義務として、株主の請求が権利濫用であるかなどを検討したうえで、株主の請求に応ずるかを判断しなければならない義務を負っているとした。本件については、被告が親族より被告会社株式の贈与を受けたが、それを詐欺により取り消す旨の意思表示などを行っていたことなどからすれば、被告が原告の請求を不当な目的による権利濫用であると判断して議事録等の閲覧等に応じなかったことは、法律的根拠及び事実的根拠を欠くものとはいえないと指摘。また、被告の行為については、善管注意義務違反があるとまではいえないと判断し、原告の請求を棄却した。