• 令和元年度の新規発生滞納額は5,528億円。新型コロナ対応による納税猶予の適用で前年度より615億円(10.0%)減少。
  • 納税猶予制度の特例の適用件数は9万5,903件、税額は2,617億7,700万円。
  • 滞納整理に係る原告訴訟は115件を提起。滞納処分免脱罪では17人員を告発。

国税庁が8月7日に公表した「令和元年度租税滞納状況について」によると、令和元年度に発生した新規発生滞納額は5,528億円となり、前年度より615億円(10.0%)減少していることが分かった。国税庁は、新型コロナウイルス感染症の対応による納税猶予制度の特例の適用や、納期限の延長等により、滞納発生が後ろ倒しになっていることが新規発生滞納額減少の要因であると分析している。滞納発生割合は0.89%であり、引き続き低い水準で推移した。

滞納整理済額は6,091億円で、前年度(6,555億円)より464億円(7.1%)減少した。国税庁は、整理済額が減少した理由として令和2年3月から新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、納税が困難な納税者に対して納税猶予制度の適用を優先して行った影響であるとしている。ただし、滞納整理済額(6,091億円)は新規発生滞納額(5,528億円)を564億円上回る結果となっている。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、納税が困難な納税者に対し、無担保かつ延滞税なしで1年間納税を猶予する特例が令和2年4月30日に導入されているが、国税庁によると、令和2年4月30日から6月30日までの間に猶予申請を許可した件数は9万5,903件、税額は2,617億7,700万円であったことを明らかにした。

また、国税庁では、通常の滞納整理の手法では処理進展が図られないような事案については差押債権取立訴訟や詐害行為取消訴訟等の原告訴訟を提起するなどの対応を図っている。令和元年度においては115件の原告訴訟を提起し、終結が130件となっている。このうち、国側が敗訴した事案は1件であった。

このほか、財産の隠蔽等により国税の徴収を免れようとする悪質な事案に対しては、滞納処分免脱罪の告発を行っており、令和元年度は9件、17人員(個人及び法人)を告発した。国税庁によると、17人員のうち12人員が起訴されており、刑が確定した8人員のうち4人員に対して裁判所は、執行猶予付きの懲役刑を1年から1年半(うち1人員は罰金も併科)、残りの4人員に対しては罰金刑の有罪判決を下している。