- 地方都市でも全用途平均及び商業地とも28年ぶりの上昇を記録した令和2年1月1日の公示地価がコロナ後の実勢価格と乖離。
- 3年に一度の土地の評価替えに伴い固定資産税の負担の在り方が議論されることになる令和3年度税制改正で、地価公示の結果にかかわらず、一定期間、課税標準を据え置く案に理解広がる。
令和3年度は固定資産税の3年に一度の評価替え年に該当し、今回の商業地等の評価替えは令和2年1月1日の公示地価に基づいて行われることになる。同日の公示地価は、大都市のみならず広く地方都市まで地価上昇が波及しているのが特徴であり、三大都市圏及び地方四市(札幌、仙台、広島、福岡)を除く「その他の地方都市」でも、全用途平均及び商業地で28年ぶりの上昇が記録されている。
ただ、令和2年1月1日の公示地価は“コロナ前”のものであり、コロナ禍の影響を受けた現在の実勢価格と乖離している。仮に同日の公示地価に基づき予定通り評価替えが行われれば、実勢価格を反映していない評価額が3年間にわたり“高止まり”し、中小企業を含む広範な納税者に多大な影響が生ずる恐れがある。増税額は全国で1,000億円を超えるとの試算もある。
従来、評価替えに伴う固定資産税の議論は、負担調整措置(固定資産税評価額の上昇に合わせて、税負担が急上昇することのないよう、負担水準に応じて固定資産税を緩やかに上昇させる措置)を延長するかどうかに限定されてきた。しかし、令和3年度改正における議論はこれにとどまらない可能性が高い。
既に企業などからは、地価公示の結果にかかわらず、一定期間、固定資産税の課税標準を据え置くよう求める声が上がっており、税制調査会の甘利会長も、報道機関とのインタビューの中で土地の固定資産税問題に言及している。また、本誌取材によると、現在、主務官庁の国土交通省は、多くの土地を有する業界の企業に緊急の実態調査を行っている模様。仮に課税標準の据え置きが実現すれば、市区町村にとっては「地価上昇に伴って得られたであろう税収」が今後数年間失われることを意味するため、市区町村からの強い抵抗も予想されるが、現在の異常事態の中での“増税”は困難と言えるだろう。
課税標準の据え置きの是非、期間・要件等の詳細は今後も調整が必要になるが、何らかの「据え置き」措置自体に対する理解は永田町・霞が関で徐々に広がりつつある。