• 東京高裁は1月28日、接待飲食店の利用代金を交際費として会計処理してきたことへの重加算税賦課の是非が争点となった事案について、控訴人(会社)の控訴を棄却した。

控訴人ら(3件の会社)は、Aが代表者であるか、実質的な経営者として経営する会社であるところ、Aが複数の接待飲食店(以下「本件各クラブ」)を利用した際の代金を、控訴人らの業務のための交際費として税務申告した。しかし、その後に受けた税務調査において、Aの個人的な飲食代金の金額が含まれているのではないかと指摘され、控訴人らは、指摘に係る支出額を損金算入せず、Aへの貸付金とする旨の法人税等及び消費税等の修正申告を行った。所轄税務署長は、控訴人らが取引先を接待した事実がないにもかかわらず、これを交際費として総勘定元帳に記載していたことなどが「隠蔽・仮装」に当たるとして、控訴人らに重加算税の賦課決定を行った。これに対し控訴人らは、重加算税賦課決定の取消し等及び国賠法による損害賠償を求めて提訴した。

一審の東京地裁は令和2年3月26日、“Aがひいきにしていたホステスの所属する店での一人飲み”と認定し、原告の請求を棄却したが、控訴人らは、この“一人飲み”認定に対し「本件各支出額は取引先等の接待のために要した交際費である。」「本件各クラブでの支出には、人脈を広げるという意味がある。」「課税庁に8割否認という絶対的な方針があり、それに合わせて税理士がドラフトを作成し、税務署職員が反面調査を実施した。」「Aの調書は任意性を欠くものとして、その信用性も当然に否定されるべきである。」などと主張して控訴した。

東京高裁(白石史子裁判長)は、「控訴人らは、Aが様々な者と交流することには人脈を広げるという意味があるなどと主張するが、単に人脈を広げるという抽象的な必要性では事業関係者に対する接待等に要した交際費とは認められない上、同人の陳述書には接待の相手方及び業務との関連性について具体的な説明はなく、的確な裏付けもない。」「課税庁に8割否認という絶対的な方針があり、それに合わせて税理士がドラフトを作成し、税務署職員が反面調査を実施したと主張するが、控訴人らの主張する経緯をうかがわせる証拠はない。」「本件調書に係る質問調査に任意に回答したと認められ、本件調書の信用性に疑問を差し挟むべきところはない。」などと一審判断を補正したうえで、本件控訴を棄却した。