- 東京地裁が2月26日、不動産会社の元役員の不正行為に伴う売上計上漏れに対し重加算税を課した事案について、賦課決定処分を容認する判決言い渡し。
- 市原裁判長は、元役員の支配法人への犯則調査を通則法65条5項にいう「調査」に当たると判示。
本件は、原告(法人)が、原告の元常務取締役Aの不正行為に伴う売上の計上漏れがあったとして、法人税等の修正申告書を提出したところ、法人税等に係る重加算税の賦課決定処分を受けたことから、当該修正申告書の提出は「その申告に係る国税についての調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に当たるなどと主張し、重加算税賦課決定処分の取消しを求めていた事案である。Aは本件各取引(土地売買)に際し、真実の取引内容を隠蔽して内容虚偽の取引を仮装、原告に帰すべき売買代金の一部を自己の支配するB法人名義などの口座に振り込ませて着服した。課税庁はBに対する法人税法違反の嫌疑による犯則事件の調査として、本件各取引の契約内容等を確認し、本件各取引に係る売買代金のうちAがBなどに振り込ませた本件着服金が原告の総勘定元帳に売上として計上されていない事実を把握した。Aは、本件各取引当時、原告の常務取締役であり、原告の不動産の売買に関し、代表者に準ずる包括的な権限を有していた。
原告は、「『調査』は通則法24条にいう『調査』(課税調査)と同義に解するべきであり、また、本件犯則調査はBに対する調査であり、原告に対する調査ではないことから、この点からも、本件犯則調査が通則法65条5項の『調査』に該当するとはいえない。」などと主張し、重加算税賦課決定処分の取消しを求めた。
これに対し市原裁判長は、「通則法65条5項は、『調査』の主体や根拠規定を限定しておらず、文言上、犯則調査を除外していない。立法経緯に照らしても、通則法65条5項にいう『調査』は、文言上犯則調査を除外していないことは明らかである。」「実質的にみても、通則法65条5項が、修正申告が調査があったことにより更正を予知してされたものでないときは加算税を賦課しないこととした趣旨は、納税者の自発的な修正申告を奨励することにあると解されるところ、犯則調査により申告漏れの事実が税務官署に明らかになった後にされた修正申告は自発的な申告とはいえないから、通則法65条5項の『調査』から犯則調査を除外すべき理由はない。」などと判示し、原告の主張を斥けている。