• 「設備の一部を構成する中古資産の取得」に中古減価償却資産に係る「簡便法」による耐用年数の適用が認められるか否かが争われた裁判で、納税者敗訴(令和3年3月30日東京地裁民事51部)。

本件は、化粧品等の製造販売を行うJ社(原告)が、取得した中古のチューブ充填機及び当該充填機に係る資本的支出、並びに中古の包装機に係る償却限度額の計算を、中古資産の耐用年数の簡便法(耐用年数省令3条1項2号)に基づき行ったところ、処分行政庁が、本件充填機等は製造設備の一部を構成するもの(総合償却資産)であるため、「簡便法」は適用できず法定耐用年数によるべきとして法人税の更正処分を行ったことから、訴訟に至った事案である。

東京地裁はまず、「機械及び装置」については法令の規定により総合償却法が採用されており、「このような総合償却法の下では、法人が設備を取得する場合、その設備を構成する個々の資産がいかなるものであるか(中古資産であるか否かを含む。)を問わず、当該設備が属する業用区分の細目について定められた総合耐用年数によるべきこととなる。」との解釈を示した。

そして、「法人が設備の一部となる中古資産を新たに取得した場合に耐用年数省令3条1項2号の規定が適用されるのは、たとえば、法人が既に稼働している工場を一括して取得した場合など、法人が有する当該業用区分の細目に係る設備の相当部分につき中古資産を取得したといえる場合(略)に限られるものと解するのが相当であり、耐用年数通達1−5−8はこれと同趣旨をいうものとして合理性がある。」と判示した。

その上で、本件の事実関係から、「本件工場における製造部門及び製品化部門に属する各資産の総体が、本件耐用年数表にいう『設備』の単位となる。」との判断を示し、「本件各資産の再取得価額が本件設備の再取得価額に占める割合からすると、本件各資産は本件設備の相当部分を占めるものといえない」として、「本件各資産の耐用年数は法定耐用年数によるべきである。」との結論を下した。

本判決により、資産の相当部分につき中古資産を一時に取得した場合に限り、見積法及び簡便法を認めるという耐用年数通達1-5-8の考え方が裁判所においても肯定された格好だ。「機械及び装置」については、複数の資産により構成される設備の稼働によって初めて本来の機能を発揮し、法人の収益の獲得に寄与する特質を持つ「総合償却資産」であるということを改めて認識する必要がある。