• コロナ禍での令和2年度査察、83件を告発し、脱税総額は69億円。国際事案は過去5年間で最も多い27件を告発。
  • 全国初の告発となった暗号資産事案で有罪判決のほか、法人税法違反幇助の再犯者に実刑判決も。

国税庁が6月17日に公表した「令和2年度 査察の概要」によると、検察庁に告発した件数は83件(前年度116件)、脱税総額(告発分)は69億円(同93億円)にのぼることがわかった。

重点事案である消費税事案は18件を告発。このうち金地金の国内取引を輸出取引に仮装する手口などにより還付申告を行った消費税不正受還付事案が9件告発されている。また、無申告事案は13件であり、このうち単純無申告ほ脱犯を適用した事案を7件告発。脱税指南により得た所得に係る法人税及び消費税の申告義務を認識していながら確定申告を行わず故意に納税を免れていた単純無申告ほ脱事案などがあった。

国際事案では、過去5年で最多の27件が告発されている。香港法人に対する架空の原価(材料費)を計上するとともに、香港に開設された法人名義預金口座に不正資金を送金し、留保するなどの方法により法人税を免れていた事例などが告発されている。

そのほか、生活保護受給者に宿泊施設を提供する貧困ビジネスを行うグループ法人や訪日外国人旅行者に人気のスキーリゾート地である北海道ニセコ地区における不動産業者など、昨今の時流に即した事案なども告発されている。

なお、令和2年度中に一審判決が言い渡された査察事件は87件で有罪率は98.9%(有罪件数は86件)であった。実刑判決は6人に出されており、査察事件単独に係るものでは懲役2年6月、他の犯罪と併合されたものでは懲役3年が最も重かった。暗号資産取引により得た利益を申告から除外し所得税を免れていたとして全国初の告発となった暗号資産事案に有罪判決(懲役1年(執行猶予3年)及び罰金1,800万円)が出されたほか、法人2社の脱税を助けた協力者に対して、法人税法違反の幇助犯として全国で初めて実刑判決(懲役10月)を受けている事案があった。

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