• スポーツベット(賭け)の払戻金の所得区分が争点となった事案について、東京高裁第9民事部(廣谷章雄裁判長)は令和3年8月25日、納税者の控訴を棄却。
  • 賭けの態様を総合考慮し、「営利を目的とする継続的行為」とは認めない判断。

納税者は、海外の複数の賭け業者が主催するスポーツの試合に係る賭けにインターネットを介して参加し、その賭けの的中により払戻金の支払を受けていた。この払戻金に係る所得について所轄税務署長は、「一時所得」に該当するとともに、一時所得の金額の計算上、本件外れ賭け金の額を総収入金額から控除することができず、的中した賭け(ベット)の掛け金の額及び特別控除額を控除した額が一時所得の金額となるとして、課税処分を行った。これに対し納税者は、本件払戻金に係る所得は雑所得に該当し、所得金額の計算上、本件外れ賭け金の額を総収入金額から控除すべきであるなどと主張して、本件各処分の取消しを求めて提訴した。

原審は、納税者の請求はいずれも理由がないとしてこれらを棄却する旨の判決を下し、納税者は控訴した。

納税者(控訴人)は、平成27年最判が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である旨判示しているにもかかわらず、原審が本件ベットの期間、回数、頻度等を考慮せず、実質的に本件ベットに係る収支の状況(利益発生の規模)のみから「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」の該当性を判断しているのは不当であるなどと主張した。

これに対し東京高裁は、「原判決は、平成27年最判の上記判示を踏まえた上、本件各年ごとに、控訴人が行った本件賭けの日数、回数及び掛け金の額とともに、本件賭けに係る損益の額及び回収率について確認し、本件賭けの態様(控訴人が主張する本件賭けの理論的な内容及び実際に行っていた賭けの方法)についても検討して、これらを総合考慮した上で、本件賭けは『営利を目的とする継続的行為』であるとは認められないと判断し、本件払戻金に係る所得は『営利を目的とする継続的行為から生じた所得』とはいえない旨説示している」などと判示。また、東京高裁はスポーツベットの収支状況などを検討し、「客観的にみて利益が上がると期待し得る状況」との控訴人の主張を斥け、控訴を棄却している。