- 請求人自身が100%出資する米国法人から受領した分配金が剰余金の配当に該当するか争われた事案。
- 審判所は、分配金は株式に係るものとして受けたものであり、資本剰余金の額の減少に伴うものではないと認められるため、剰余金の配当に該当すると判断(令和2年10月27日)。
本件は、請求人(居住者)が米国法人(請求人が100%出資する株式会社)から受領した分配金について、その一部はアメリカ合衆国法上の資本の払戻しであり配当所得には当たらないとし、また、外貨建取引の円換算は対顧客直物電信買相場(TTB)を適用すべきであるなどとして更正の請求が認められなかった部分の取消しを求めた事案である。請求人は、米国法人の利益剰余金はマイナスであることから、分配金の原資は利益剰余金ではなく資本の払戻しによるものであり、米国法において制度上認められているものであるところ、日本の会社法及び所得税法に同様の制度はないから、分配金を配当所得とする根拠はないなどと主張した。
審判所は、米国法人の申告書においては、期首における繰越利益剰余金に当期純利益を加算した金額から分配金を差し引いた金額を期末の繰越利益剰余金としていること、また、資本金等を含む資本勘定の各項目の金額を変動させていないこと、分配金は請求人が保有する米国法人の株式に係るものとして受けたものと認められると指摘し、本件分配金は請求人が株式又は出資に係るものとして受ける剰余金の配当であって、資本剰余金の額の減少に伴うものではないと認められることから、法人から受ける剰余金の配当(所得税法24条1項)に該当するとの判断を示した。
また、請求人は、所得税法57条の3第1項は外貨建取引における円換算についてTTM(TTSとTTBの平均値)で換算した金額とは規定しておらず、円換算はその取引を計上すべき日におけるTTMによるとした所得税基本通達57の3-2の定めは合理性を欠くなどと主張した。
この点審判所は、円換算とは外国通貨と本邦通貨を経済的に等価値で交換する際の金額の計算であると解されるところ、為替相場に用いるTTBとTTMとの差額又はTTSとTTMとの差額は、金融機関の手数料及びリスク料としての性質を有していることからすれば、外国通貨によって表示される経済的利益の円換算については、金融機関の手数料等相当額を含まないTTMによるのが合理的であるというべきであるとの判断を示し、請求人の主張を斥けた。