- 東京都、代理店ではない生命保険会社の営業職員への個人事業税課税について納税者からの課税処分の取消訴訟の提起を受け、令和3年9月6日付で、賦課決定の税額を0(ゼロ)とする個人事業税減額賦課決定通知書を発出。原告(納税者)に訴訟を取り下げ。
本件は、生命保険会社に一社専属の代理店ではない生命保険会社の営業職員(原告)が、東京都から受けた個人事業税の賦課処分を不服とし、同処分の取消しを求めて提訴したものである。
東京都は、「原告が『保険外交員』として行う業務は、営利又は対価の収得を目的として、自己の計算において独立的に反復継続して行われる経済行為であるから事業性が認められる。また、当該業務は、『手数料、その他の名義をもってする報酬の収得を目的として、一定の商人のために、平常、その営業の部類に属する取引の代理又は媒介を行う事業』であると認められるから、代理業に該当する。」「原告の住所を事務所等とみなして課税しているものである。」などを課税理由に挙げていた。
原告は、「原告のような代理店ではない生命保険会社の営業職員に対する個人事業の課税は長年行われてきておらず、現在全国47都道府県で唯一東京都のみが平成29年度から独自の判断で課税している。」「事務所や事業所を有しない個人は事業税の納税義務者には該当しないものと解される。」「原告は、一社専属の生命保険の営業職員であり、〇〇生命保険株式会社の勤務先以外に事務所や事業所を有していないことから、地方税法第72条の2第3項に規定する個人事業税の納税義務者にはそもそも該当しない。この勤務先以外に事務所や事業所を有していないことについては、原告が平成30年の確定申告において、自宅の減価償却費を計上していないことや、水道光熱費を必要経費に計上していないことからも明らかである。」などと主張して個人事業税の賦課課税処分の取消しを求め、令和3年7月14日に東京地裁宛に訴状を提出した。
東京都は、指定された第1回口頭弁論期日直前の令和3年9月6日、賦課決定の税額を0円とする個人事業税減額賦課決定通知書を発出し、原告にその旨を通知した。9月14日に開かれた第1回口頭弁論では、東京都は訴訟の利益が喪失したものとして、本件訴訟の却下を求め、原告は本件訴訟を取り下げた。
個人事業税減額賦課決定通知書の異動事由欄には、「課税要件の該当性を改めて見直し、課税対象外と確認したため」と記載されている。