• 令和2事務年度の法人税実地調査は新型コロナ感染症拡大の影響により2万5,000件と過去最低。一方、簡易な接触は6万8,000件と大幅増。

国税庁が11月30日に公表した「令和2事務年度 法人税等の調査事績の概要」によると、法人税の実地調査件数は2万5,000件(対前年比32.7%)と新型コロナ感染症拡大の影響により過去最低の数字となっていることが分かった。実地調査1件当たりの平均所要日数も20.2日と昨事務年度11.9日よりもさらに伸びることになった。申告漏れ所得金額は5,286億円(同67.7%)、追徴税額は1,936億円(同81.8%)といずれも減少したが、調査1件当たりの追徴税額は780万6,000円(同249.0%)と増加した。

なお、令和2事務年度に着手した実地調査のうち、WEB会議システムを利用したリモート調査は約3割で実施されたという。

一方、コロナ禍にあって簡易な接触(税務署において書面や電話による連絡、来署依頼による面接により、納税者に対して自発的な申告内容の見直しを要請するもの)は6万8,000件(対前年比156.5%)と昨事務年度の4万4,000件から大幅に増加している。申告漏れ所得金額は76億円(同179.2%)、追徴税額は62億円(同228.7%)といずれも増加した。

なお、実地調査と簡易な接触による接触率は下表のとおりとなっている。

国税庁では、従来から①消費税還付申告法人、②海外取引法人、③無申告法人に対する調査を重点的に実施している。消費税還付申告法人に対しては、3,066件の実地調査を実施。このうち、2,073件から非違がみつかり追徴税額は219億円にのぼっている。調査では、消費税の還付金を不正に受領するため、自社と関係のない外国人旅行者のパスポートの写しを利用し、店頭で外国人旅行者に販売したかのように装い、国内事業者への課税売上げを外国人旅行者に対する免税売上げに仮装している事案などがあった。また、海外取引法人に対しては4,569件の実地調査を行い、1,424件から1,530億円の申告漏れ所得金額が把握されている。調査では、法人代表者が海外で保有する預金口座情報をCRS情報により入手したことにより不正が発覚した事案などがあった。