• インボイス制度導入に伴い、取引先の免税事業者に対して課税事業者になるよう要請すること自体は、独禁法上の問題にはならず。しかし、一方的に取引停止等を通告することは、独禁法上等の問題に。
  • 一方的な通告とみなされないためには、猶予期間を十分に設け、取引先と丁寧な協議することが必要。
 適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)が令和5年10月1日から導入される。取引相手が免税事業者の場合、一定の経過措置はあるものの、仕入税額控除ができないため、免税事業者に適格請求書等発行事業者の登録を要請しようと考える向きもあろう。
 この点、財務省や公正取引委員会などは3月8日、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を一部更新し、免税事業者に対して課税事業者になるよう要請した場合の独占禁止法上の取扱いを明らかにした。
 Q&Aによれば、仕入側の課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対して課税事業者になるよう要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題にならないとの見解を明らかにしている。ただし、要請にとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げることや、それにも応じなければ取引を打ち切るなどと一方的に決定し、通告することは、独占禁止法上又は下請法上問題となるおそれがあるとしている。例えば、免税事業者が取引価格の維持を求めたのにもかかわらず、取引価格を引き下げる理由を書面や電子メール等で通告し、免税事業者の回答を得ないまま取引価格を引き下げることなどが該当する。また、免税事業者が、要請に応じて課税事業者になったとき、明示的な協議なしに価格を据え置くことなども独占禁止法上問題になるとしている。
 いずれの場合も、独占禁止法上問題となるのは、取引上優越した地位にある事業者(仕入側)が一方的に決定し通告することや、免税事業者が今後の取引に与える影響等を懸念して、優越した地位にある事業者の要請を受け入れざるを得ない状況にあることが前提となっている。公正取引委員会によると、免税事業者と価格交渉などの話し合いをする場合には、丁寧に協議を行い、一方だけが不当な不利益を被ることがないような適正な取引を行うことが望ましいとしている。また、仮に免税事業者との取引を停止する場合は、独占禁止法違反を未然に防止するためにも、十分な猶予期間を設けた上で予告する必要があるとした。