- 令和3年度の査察事績、75件を告発し、脱税総額は61億円。なかには富裕層向け投資マンション販売会社を告発した事案も。
国税庁が6月15日に公表した「令和3年度 査察の概要」によると、検察庁に告発した件数は75件、脱税総額(告発分)は61億円にのぼることが分かった。
重点事案である消費税事案は21件を告発、このうち、愛玩用動物のイベントを企画・開催する法人が、架空の課税仕入れを装う方法で控除対象仕入税額を過大に計上するなどの消費税不正受還付事案は9件告発されている。また、無申告事案は16件であり、このうち、単純無申告ほ脱犯を適用した事案は4件であった。インターネットのショッピングサイトを利用して輸入雑貨等を販売していた法人が、事業実態のない場所を本店所在地としたほか、代表者の知人名義の預金口座等で売上を回収する等の方法で所得を秘匿して、法人税及び消費税を免れていた事案等があった。
国際事案では17件を告発。なかには富裕層に対して投資用マンション販売を行う会社が、海外法人に対して架空の経費を計上するとともに、同経費の支払額(送金額)を、関係者が主宰する海外法人名義の預金口座を経由して還流させる不正スキームを利用して法人税を免れている事案もあった。同事案では、租税条約に基づく情報交換制度の活用により不正スキームが解明されている。
このほか、脱税によって得た不正資金の多くは現金や預貯金として留保されているが、不動産や有価証券への投資の他、脱税者が費消していた事例もあり、不正資金の一部から、高級車両や高級腕時計が購入された事例、海外カジノを含むギャンブルや高級クラブの遊興費として数百万円から数千万円が支出された事例があった。
なお、令和3年度中に一審判決が言い渡された査察事件は117件あり、有罪率は100%であった。実刑判決は5人に出されており、査察事件単独に係るものでは懲役2年、他の犯罪と併合されたもので懲役9年が最も重かった。金地金の輸出販売を装い、輸出免税制度を使った消費税還付の仕組みを悪用した法人の代表者には懲役1年8月の実刑判決が出ている。