- 金融庁、海外支店であっても、海外子会社の取扱いに合わせてテリトリアル課税(海外の所得は配当しても日本で益金不算入のみ)に。
- 海外ファンドとの債券現先取引(レポ取引)に係る非課税措置の恒久化を求める。
金融庁の令和5年度税制改正要望では、クロスボーダー取引に係る税制上の環境整備が盛り込まれており、その1つに海外進出における支店と子会社形態の税制上のイコールフッティングを挙げている。海外子会社と海外支店とで異なる税務上の取扱いを統一させるということだが、具体的には、支店形態であっても、海外子会社の取扱いに合わせてテリトリアル課税(海外の所得は配当しても日本で益金不算入のみ)にすることを求める。
国際課税のルールにおいては、課税上、支店と子会社を同等に取り扱う流れとなっている。OECDの新国際課税ルールにおいても、支店を一の構成事業体として、子会社と同等に取り扱うこととされている。金融庁によれば、英国、ドイツ、シンガポール、香港は海外支店についても、海外子会社と同様、テリトリアル課税を採用しているということだ。
しかし、日本では、海外支店については全世界所得課税、海外子会社についてはテリトリアル課税が採用されており、法人の形態によって税務上の取扱いが大きく異なっている。海外子会社の場合は、海外の所得は配当しても日本で益金不算入とされるのみだが、海外支店による場合は、海外の所得は日本の法人税率で合算課税となってしまう。
特に銀行の場合は、支店形態で海外に進出することが一般的であり、日本の法人税率は段階的に引き下げられてきてはいるものの、日本よりも法人税率が低い国に進出する場合には大きな負担になっている。加えて、他の主要国の銀行が進出する場合に比べると、大きく競争力が劣ることになる。このため、金融庁では、海外支店の税務上の取扱いを海外子会社と同様のテリトリアル課税にするよう求めている。
また、海外ファンドとの債券現先取引(レポ取引)に係る非課税措置の恒久化も求めている。現行、外国金融機関等・海外ファンドが本邦金融機関等から受取るレポ差額は、非課税とされているが、この非課税措置については、外国金融機関等に関するものが恒久措置である一方、海外ファンドに関するものは2023年3月31日までの時限措置となっている。このため、金融庁では、少なくとも期限延長が必要だとしている。