• 審判所は、ふるさと納税に係る経済的利益の額は各返礼品の調達価格をその算定の基礎とすることが相当であると判断し、請求人の主張を斥ける(令和4年2月7日裁決)。
 本事案は、請求人が受けたふるさと納税の返礼品について、一時所得の計算上総収入金額に算入すべき金額がいくらであるか争われたものである。原処分庁は、請求人の受けた返礼品に係る経済的利益の価額は地方公共団体による返礼品の評価額を基に算定した価額によるのが相当であるとして所得税等の更正処分等を行った。これに対し、請求人が、原処分庁の算定した経済的利益の価額は客観性や合理性を欠くものであるなどとして、原処分の全部の取消しを求めていた。
 審判所は、「経済的な利益の価額」について、所得税法36条1項は、その年において収入すべき金額(金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には、その金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額)とする旨規定しており、ここでいう「価額」とは、取得の時における客観的交換価値、言い換えると自由市場において市場の事情に通じ、かつ、特別な動機を持たない多数の売主と買主が存在する場合に通常成立すると認められる価額、すなわち時価を言うものと解されるとした。
 その上で審判所は、返礼品に係る経済的利益の価額について、返礼品は地方公共団体がふるさと納税をした個人に謝礼として送付するものであり、返礼品を選定し調達する地方公共団体がその価値を最も理解していると考えられるとした。また、返礼品が当該個人への謝礼であることからすれば、地方公共団体が謝礼のために支出した返礼品調達価格を経済的利益の価額の算定の基礎とすることが相当であると述べた。さらに、地方公共団体が返礼品をその調達時における時価を超えて調達することはないと考えられることや、地方公共団体が返礼品を調達した時期とふるさと納税をした者が返礼品を取得する時期は近接しており、この二つを同時期とすることは特段不合理ではないと認められるとした。
 したがって、返礼品調達価格は、地方公共団体が返礼品を調達したときにおける返礼品の客観的交換価値を示すものと評価できることから、請求人が返礼品を取得することで、返礼品調達価格に相当する経済的利益を受けたことになると判断。審判所は、本件返礼品に係る経済的利益の価額は、返礼品の返礼品調達価格によるのが相当であるとして、請求人の主張を斥けた。