- コロナ禍で実地調査が減少する中、若手職員の調査能力向上が課題。コロナ前の水準にまで実地調査件数を増やすなど、対人能力を強化。
コロナ禍にあって実地調査件数が大幅に低下している。コロナによって外出制限や対面での調査が限られていたわけだが、法人税のケースでみると、平成30事務年度で9万9千件あった実地調査が、令和2事務年度では2万5千件まで減少している。ここで国税庁が危惧しているのは、調査現場に出ることができず、十分な調査経験を積むことができなった若手職員の育成だ。
国税庁が10月6日、7日に開催した全国国税局課税(第一・第二)部長(次長)会議では、若手職員の調査能力向上に向けた取組に関する議題が挙がっており、意見交換が行われている。ウィズコロナの中、納税者の要望を踏まえつつ、コロナ前の水準に向け実地調査件数を増やすことにより、若手職員に調査経験を積んでもらい、対人能力の強化を図りたい意向だ。例えば、複数人での臨場のほか、税務署内に若手職員と年齢の近いサポート役の先輩職員を設置したりするなど、調査能力の向上を図る。
一方で、消費税不正還付事案や富裕層、高度な節税スキーム事案などについては、組織で対応していくこと必要であるとの認識の下、実際に課税できるか否かといった審理面でのサポートなど、調査支援体制の整備などについて意見交換が行われた。
また、国税庁では、納税者の調査選定作業に関してデータ活用を進めているが、その分析ツールの1つが「納税者管理モデル」だ。納税者管理モデルとは、①申告状況や過去の接触状況等を踏まえ、個々の納税者に対して想定されるリスクを総合的に判断、②個別の資料情報がある場合に申告状況等とマッチングすることにより、個別の非違を想定することができるというもの。課税部長会議では、各国税局で試行中の各種モデルが税務署等の選定業務に馴染むよう工夫している取組や、モデルの精度向上に向けた効果検証に係る取組などについて意見交換が行われている。