- 登記所での法定相続情報一覧図の誤りで相続税の申告が期限後申告となってしまった場合、「正当な理由」に該当するか争われた事案(東裁(諸)令3第131号)。
- 審判所、請求人自身が相続人に該当しないと判断して法定申告期限内に提出しなかったことについて「正当な理由」があると判断。原処分を取り消し。
本件は、請求人の相続税の申告が法定申告期限後にされたものであるとして、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分をしたほか、延滞税の督促処分をしたことに対し、請求人が当該申告は期限内申告であるなどとして、これらの処分の全部の取消しを求めた事案である。相続人の1人が出張所の登記官に対し、法定相続情報一覧図を提出した上で、その写しの交付の申出を行ったところ、出張所の職員が本件相続に係る相続人の範囲の判断を誤り、請求人が相続人に該当しないとして、請求人を除外した誤った内容の一覧図が発行されたため(その後、正しい内容の一覧図が発行)、相続税の申告が遅れたというもの。裁決では、期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否かが争点となっている。
審判所は、請求人は相続開始日に自己のために相続の開始があったことを知ったものと認められ、相続税の申告書は法定申告期限後に提出されていることから、期限後申告に該当するとした。その上で、正当な理由があるかどうかについては、①請求人を相続人から除外した誤った内容の法定相続情報一覧図の写しが発行されたこと、②請求人が、法定相続情報一覧図の写しの記載内容のとおり本件相続に係る遺産分割協議に参加しなかったことが認められる、③法定相続情報一覧図の写しは、登記官が被相続人の出生時からの戸籍及び除かれた戸籍の謄本や相続人の戸籍の謄本などによって法定相続情報の内容を確認し、かつ、その内容と法定相続情報一覧図に記載された法定相続情報の内容とが合致していることを確認したときに、申出に係る登記所に保管された法定相続情報一覧図の写しである旨の認証文を付した上で、職氏名を記載し、職印を押印して交付するものであることから、本件については、請求人自身が相続人に該当しないと判断して相続税の申告書を法定申告期限内に提出しなかったとしても、真に請求人の責めに帰することのできない客観的な事情があるとし、期限内申告書の提出がなかったことについて「正当な理由があると認められる場合」に該当するとの判断を示し、原処分を取り消した。