• 東京地裁、預託金制ゴルフ会員権の預託金返還請求権の貸倒損失は、退会時ではなく支払免除の効力発生時に損金算入すべきと判断(令和5年1月27日判決)。

ゴルフ場を経営するG社は、平成16年に東京地裁から民事再生法に基づく再生計画認可の決定を受けた。再生計画では、プレー権の存続を希望する会員債権者には、プレー権を継続して保護し保証する一方で、預託金債権の元本金額のうち97.5%に相当する部分は支払債務を免除することとされた。そして、平成17年1月31日に支払免除の効力が生じる旨の通知がされ、同日にその効力が生じた。預託金制ゴルフ会員権を保有する法人である原告は、平成29年に本件カントリークラブの退会手続を完了し、残額の入金を受けた。

原告は、返還を受けられなかった預託金債権に係る損失については、退会した事業年度に損金算入すべきと主張した。

これに対し東京地裁は、まず、平成7年9月5日最高裁判決を引用し、預託金制ゴルフ会員権について、「当該会員がゴルフ場施設を利用し得る間は、施設利用権が基本的部分を構成する包括的な権利として存在することになるから、一種の無形固定資産に該当することになると解されるが、当該会員が会則等に従って退会の届出をし、預託金の返還を求めることができるようになった場合には、その時点で初めて預託金債権が金銭債権として顕在化することになるのが原則である」との解釈を示した。

他方で、法人税基本通達9−6−1等を示し、「本件預託金債権については、原告が退会した平成29年7月25日に初めて全部が金銭債権として顕在化したのではなく、そのうち元本金額の97.5%に相当する部分(本件損失額)については、確定した本件認可決定によって認可された本件再生計画に従い、本件支払免除の効力が生じた平成17年1月31日に、顕在化した上で切り捨てられて消滅したと認められる。」として、当該損失は、同日を含む事業年度の損金の額に算入されるべきとの結論を下した。

また東京地裁は、「施設利用権と預託金債権とが不可分であること」を前提とする原告の主張に対し、「預託金制ゴルフ会員権に係る包括的な権利義務関係は、性質上不可分なものであるとまではいえない」、「預託金債権は、包括的な権利義務関係において潜在化・抽象化しているとはいえ、数量的に可分な金銭債権であること自体に変わりはないのであるから、施設利用権との一体性を維持しながら、その一部について減免することができないとは解されない」との考えも示している。