• 地裁、原告が譲渡した家事用資産であるフェラーリが「使用又は期間の経過により減価する資産」(所法38②)に該当し、譲渡所得の計算上、取得費から減価の額を控除する「取得費控除」の対象になると判断(東京地裁令和5年3月9日判決)。

原告は、譲渡所得における価値の目減り分は、その実態に即して正確に把握すべきなどと主張したが、東京地裁は、ある資産の価値が減少する程度の計算については、個々の資産に係る事象を捨象して類型ごとに行うことが前提とされており、非業務用資産も業務用資産と同様に取り扱うとされているとの解釈を示した。

そして、「当該資産の『価値』は、原則として、個別具体的な事情や納税者の主観的意義付けを離れて、その類型ごとに、社会通念上想定される本来的な目的や機能という観点から判断すべき」であり、例外は「その価値が、当該類型の資産に求められる本来的な目的・効用とは異なる面に置かれていることが社会通念上確立しているといえるような場合」に限られるとの考えを示した。

その上で、所得税基本通達2−14に触れ、「社会通念上『美術品』に該当しない資産、すなわち、当該資産の類型上、鑑賞以外の実用的な目的又は機能が想定される資産が、なお『時の経過によりその価値の減少しない』資産に該当するといえるような例外的な場合とは、当該資産が、『骨とう』すなわち『古美術品、古文書、出土品、遺物等』に類するといえる程度の長期間を経てもなお確立した高い価値を維持しているような場合等に限られるというべきであり、単に市場における希少性等によってその価値が高騰しているにすぎないような場合を含むものではない。」と判示した。

東京地裁は、本件車両A及びBについて、「その機能面のみならず、美的側面や希少性も価格形成要因の相当部分を占めているものと認められる」としながらも、その価値の背景に自動車の有する本来的な機能があるとした。

そして、本件車両A及びBは、「骨とう」に類似するといえる程度の長期間を経てもなお高い価値を維持しているような場合に当たると解することはできないと指摘。自動車は、原則として「時の経過によりその価値の減少しない」資産には該当しないこと、また、本件車両A及びBが上記例外的な場合には該当しないことから、「使用又は期間の経過により減価する資産」として取得費控除の対象になると結論づけた。