- 電子帳簿等保存制度における新たな猶予措置に必要な「相当の理由」とは、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合が該当。
- システム等が整っており電子保存等ができる場合や、資金繰りや人手不足の様な理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく場合には猶予措置の適用はなし。
令和5年度税制改正では、令和4年度税制改正による宥恕措置(「やむを得ない事情」があれば、従前と同様、出力書面による保存を可能とする)が廃止された後の恒久化された新たな猶予措置が講じられることになった(令和6年1月1日以後適用)。具体的には、システム対応等を「相当の理由」により行うことができなかった事業者については、従前行われていた出力書面の保存に加え、データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、検索機能の確保の要件等を不要としてそのデータの保存を可能とするというものだ。
この新たな猶予措置を適用することができる「相当の理由」とは、6月30日に公表された「電子帳簿保存法取扱通達」では、「例えば、システム等や社内でのワークフローの整備が間に合わない場合等がこれに該当する」と明記された(通達7−12)。「相当の理由」については、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意して設けられたものであるため、電磁的記録そのものの保存は可能であるが、保存要件に従って保存するためのシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わないといった、自己の責めに帰さないとはいえないような事情も含め、要件に従って電磁的記録の保存を行うことが困難な事情がある場合を対象とするものであり、資金的な事情を含めた事業者の経営判断についても考慮がなされるとしている。
ただし、システム等や社内でのワークフローの整備が整っており、電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存要件に従って保存できる場合や、資金繰りや人手不足等の様な理由ではなく、単に経営者の信条のみに基づく理由で電子保存等をしない場合には、新たな猶予措置の適用はないとしているので留意したい。
そのほか、新たな猶予措置の適用については、現行の宥恕措置とは異なり、適用を受けるには電磁的記録自体を保存するとともに、電子的記録及びその出力書面について提示又は提出の求めに応じることできるようにしている必要があるとしている(通達7−13)。