• ネット販売で実在しない会社名等を使用したことが隠蔽又は仮装の行為に該当するか争われた裁決(福裁(所・諸)令4第12号)。
  • 審判所、実在しない会社名等を記載していたものの、商品の仕入れなど、請求人の実名で取引を行っていることからすると、直ちに隠蔽又は仮装の事実があったとは認めず。

本件は、会社員である請求人が副業で行っていたインターネット販売に係る収益について、所得税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、インターネット販売において実在しない会社名や親族の名を使用するなどの隠蔽又は仮装の行為があったとして、重加算税等の賦課決定処分を行ったことに対して、請求人が原処分の一部の取消しを求めた事案である。請求人は、ネットショップに自身の名前を記載しなかったのは、勤務先では副業が認められていなかったためであるなどと主張した。

審判所は、出品プロフィール画面には、代表者名として請求人の母の姓名が記載されていること、発送伝票の記載には請求人の姓のみを記載していたことなどからすると、顧客に対し、ネット販売を請求人ではなく請求人の母が行っているかのように誤認させる行為となっているとも言い得ると指摘。しかし、一方で請求人は、商品の仕入れなどは一貫して請求人の実名で取引を行い、請求人本人名義の口座を用いていたことからすると、商品の出品の段階において、請求人の母の姓名や請求人の姓のみを記載したりしていたことをもって、直ちに請求人がネット販売を行っていることを隠した又は請求人の母がネット販売を行っているかのように装ったと評価することはできないとした。また、出品者プロフィール画面の出品者の正式名称欄等に、実在しない会社名を記載していたことについても、特定商取引法等の問題は別にして、請求人の携帯番号等、請求人自身の表示・記載をしている部分もあることなどからすると、直ちにネット販売に係る取引上の名義を隠す、あるいは、他人と偽る行為であるということはできないとした。

したがって、審判所は、請求人は商品の仕入、商品の出品や顧客への引き渡し、代金回収といったネット販売の各取引段階において、取引上の名義に関し、あたかも請求人以外の者が取引を行っていたかのごとく装い、故意に事実をわい曲するなどの仮装行為を行っていた又は請求人に帰属するネット販売の売上げを秘匿する等の隠蔽行為を行っていたとは認められないとし、重加算税の賦課決定処分等を取り消した。