• 東京地裁、横領された預金の返還請求訴訟を経て受領した和解金の一部は遅延損害金に該当し、雑所得として申告すべきとした課税処分を支持(東京地裁令和5年11月30日判決)。

個人である原告は、家族と共に韓国の銀行に預金していたが、銀行の支店長が、その預金を原告の家族名義の複数の口座に移動させた上、最終的には、本件各口座から原告家族の同意なく引き出して第三者に貸し付け横領したため、原告家族は、預金の返還を求めて、韓国の裁判所に対し民事訴訟を提起した。その結果、原告家族は、和解勧告決定に基づき、本件銀行から和解金を受領したが、原告は和解金のうち自らに分配された金額を総所得金額に含めずに確定申告をしたため、当該分配金のうち、和解勧告決定の決定理由において遅延損害金とされた部分は原告の雑所得に該当するとして、処分行政庁から更正処分等を受けた。

本件和解金の性質について、原告は和解金の全額(約580億ウォン)が預金返還請求権の対象であり非課税所得であると主張したが、国は、預金返還請求権の対象は最初に新規口座に入金された金額(約430億ウォン)であり、その余の金額(約150億ウォン)はこれに対する遅延損害金であると主張していた。

東京地裁は、(1)原告家族は、本件銀行に対して①預金返還請求権及び②その返還の遅延に対する損害金支払請求権を有しているとして、本件民事裁判でその支払を求めていたこと、(2)本件和解勧告決定の決定理由においても、「凡その根拠」という名目であれ、本件和解金は上記①及び②の各一部ずつで構成されている旨が記載されていること、(3)原告の両親が韓国国税庁に対して遅延損害金相当額を雑所得として申告していることなどを指摘し、本件和解金は、約430億ウォンの預金返還請求権及びその返還の遅延に対する約150億ウォンの損害金支払請求権に対する金員として原告家族に支払われたものとの判断を下した。

その上で、原告が受領した本件分配金を本件和解金と同様の割合で元金部分と遅延損害金部分に按分した結果、後者の部分に相当する本件金員は預金返還請求権にかかる遅延損害金に該当するものと結論づけた。

そして、履行遅滞に基づく損害賠償金は、元金の使用によって得られたであろう利益の損失を補填するものであることから、非課税所得(所得税法9条)には該当せず、雑所得として課税すべきとした更正処分等を適法と認めた。