• 東京地裁、帳簿書類に仕入先の真実の氏名等が記載されているとは認められないとして、仕入税額控除を認めず(令和6年7月11日判決)。

本件は、雑貨等の輸出等を行う法人(原告)が、各仕入れに係る領収証及び総勘定元帳に記載された仕入先の氏名が真実と認められず、消費税法30条7項本文に規定する「帳簿及び請求書等」を保存しているとは認められないなどとして更正処分等を受けたことから、訴訟に至った事案である。

東京地裁は、消費税法30条8項及び9項が、帳簿書類に課税仕入れに係る取引の内容のみならず、仕入れの相手方等の氏名又は名称の記載を求めたのは、仕入税額控除の対象となる課税仕入れの相手方等及びその内容を特定させて、仕入税額控除の信頼性、正確性を担保しようとしたものと解されるとした上で、法定帳簿書類における課税仕入の相手方等の氏名又は名称の記載は、真実そのものであることが原則であり、少なくとも、相手方等を示す屋号であるなどその者を特定し得るものである必要があるとの考えを示した。

その上で、本件各領収証において、①仕入先の氏名と住所及び電話番号との対応関係が一致していないものが複数存在していること、②一致していても、その氏名の者の記載住所地における居住の事実が確認できなかったこと、③当該住所地の居住者の中に本件各仕入れに係る取引を行った旨述べた者がいなかったこと等を指摘。これらの事実から、本件帳簿書類に、本件各課税期間における課税仕入れの相手方等を特定し得る真実の氏名又は名称が記載されているものとは認められず、相手方等とされる者の氏名等が形式的には記載されているものの、本件帳簿書類は、法30条7項で保存が要求されている法定帳簿書類には該当しないとの判断を下した。

また原告は、本件各名義人はグループの代表者であり、その背後には不特定多数の実際の購入者らがいるため、原告の事業は「不特定かつ多数の者から課税仕入れを行う事業で再生資源卸売業に準ずるもの」に該当し、法定帳簿における課税仕入れの相手方の氏名又は名称の記載を省略することが可能であるなどとも主張した。

しかしながら、これに対しても東京地裁は、そのような事実を裏付ける証拠はなく、仮に原告の上記主張を前提としたとしても、本件各名義人と一度は直接対面して契約していたという取引形態からは、実際の購入者らと直接取引する場合であっても、これらの者が不特定かつ多数の一般消費者であるとは認められないなどとしてその主張を斥けている。