• 東京地裁、実体のない外注加工費の帳簿書類への計上について、代表者が意図的に担当者に指示して行ったと認定し、事実の仮装又は隠蔽(通則法68①)にあたると判断(令和6年5月9日判決)。

原告は、バイク便による貨物の運送事業を営む法人である。従業員はおらず、配送業務をすべて外注先ライダーに委託し、N氏に経理業務を業務委託していた。

東京地裁は、①外注先ライダーに対する報酬が入力された本件各集計表は経営上特に重要な資料であること、②本件各外注費は年額平均約452万円で原告の外注費全体に占める割合は約10%であったこと、③原告代表者の生計という面からも原告の経営状態は重要であったことを考慮すると、原告代表者が、約7年間もの間、本件各集計表に入力された内容を確認せず、この中に本件各外注費が計上されている事実を認識していなかったとは考え難いと指摘した。

また東京地裁は、主に本件各外注費を計上したことによって生じた帳簿上の現金残高の不足を解消するために借入金が計上されており、原告代表者はその旨を税理士から報告を受けて承知していたとし、これらの事実から、原告代表者は本件各外注費が計上されている事実を認識していたと判断した。

その上で、N氏は業務委託を受けていた者にすぎず、原告代表者が、本件各外注費が実体のない架空のものであることを認識した上で、N氏に指示して本件各集計表及び本件出納帳に計上させていたものと認められるとして、本件各外注費の計上は、意図的にされたものであると結論づけた。

原告側は、本件各外注費は本件営業スタッフに対する業務委託報酬であり、原告代表者がN氏に対して業務委託契約が終了したことを伝えるのを失念したために計上され続けてしまったものであるなどと主張していた。

これに対し東京地裁は、原告が本件営業スタッフに営業事務を業務委託していたことを客観的に裏付ける証拠は存しない上、原告代表者の陳述の曖昧さからも、本件営業スタッフが実在したのかについては、強い疑問を差し挟まざるを得ないとした。

また、本件営業スタッフは、仮に存在していたとすれば原告において特異な存在であったにもかかわらず、日常的に顔を合わせる機会があった原告代表者とN氏が、本件営業スタッフとの契約が終了してから約10年間もの間、本件営業スタッフとの契約が終了したことについて何らの話もしなかったとは考え難いとも指摘し、原告の主張を斥けた。