• インボイス制度の導入に伴い仕入税額控除が取れないケースが増える中、委託販売に該当するか否かで税負担に大きな差も。今後は委託販売か通常の売買かを検討することがより重要に。

委託販売とは法律上の概念ではなく、一般に本人(委託者)が他人(受託者)に手数料を払って商品の販売を委託する取引形態をいう。私法上は代理商、問屋等が委託販売の受託者とされることもある。消費税上は、委託販売における受託者は、顧客から支払いを受ける資産の譲渡の対価ではなく、委託者から支払を受ける役務の提供の対価(委託販売手数料等)を課税標準として計上するのが原則的な取扱いとされる(消基通10−1−13)。ただ、委託販売の受託者が問屋である場合、受託者が資産の譲渡の“当事者”になると判断した裁判例もあり(大阪地裁平成25年6月18日判決)、同じ委託販売でも、その法的性質に応じて消費税の課税関係は異なる。上記通達も、課税資産の譲渡のみを委託されている場合には、受託者において、顧客から支払いを受ける資産の譲渡の対価の額を課税標準とし、委託者に支払う金額(手数料相当額を控除した額)を課税仕入れに係る対価の額とすることも差し支えないとしている。いずれにせよ、仕入税額控除が認められる場合には、委託販売であるか否かで税負担に差は生じない。

一方、仕入税額控除が認められない場合には税負担が大きく変わる。その例として挙げられるのが、令和5年9月5日裁決(東裁(諸)令5第15号)だ。請求人は、請求人の店舗に複数の取引先が持ち込んだ貴金属等を請求人の顧客に販売する取引について、顧客から支払いを受ける販売額を消費税の課税標準に含め、取引先に支払う購入額を課税仕入れに係る支払対価の額に含めて消費税等の申告をしたところ、帳簿保存要件(消法30⑦)を満たしていないとして仕入税額控除を否認された。請求人は、当該取引は委託販売であり、販売額から購入額を控除した差額のみが役務の提供の対価として消費税の課税標準になると主張したが、審判所は、委託販売であれば、通常は請求人が商品の販売を受託する旨、手数料報酬額などの合意事項の記載があってしかるべきところ、本件の取引関係書類にはこれらの記載がなく、むしろ「買取り」等の記載があったことから、当該取引は委託販売ではなく売買であり、顧客への販売額が課税標準となるとした。インボイス制度導入に伴い仕入税額控除が認められないケースが増える中、今後は委託販売に該当するか否かの検討がより重要となろう。