- 生活費及び学資の前払としての送金が、社会通念上相当と認められる範囲の金銭の交付と認められるか争われた裁決(令和6年1月29日判決)。
- 審判所、金銭交付の時点では学資等として具体的な支払の予定があったとはいえないと判断。無償譲渡に該当し、請求人の請求を棄却。
本件は、亡滞納者が、生前に請求人に対して行った請求人名義口座への振込みによる金銭交付(本件金銭交付)が、国税徴収法39条《無償又は著しい低額の譲受人等の第二次納税義務》に規定する無償による譲渡に該当するか否かが争われたものである。
請求人は、亡滞納者が行った金銭交付は、別居していた請求人に対する将来の生活費及び医学部に進学する子のための学資等である婚姻費用の前払であり、社会通念上相当と認められる範囲の金銭の交付であるから、無償による譲渡には該当しないなどと主張した。国税徴収法基本通達39条関係3の注3では、滞納者が生計を一にする親族の生活費、学費等に充てるためにした社会通念上相当と認められる範囲の金銭又は物品の交付は、親族間の扶養義務等の趣旨に鑑み、徴収法39条に規定する「無償又は著しく低い額の対価による譲渡」には当たらないとしている。
本件について審判所は、請求人は亡滞納者との婚姻期間中に収入を得ておらず、本件金銭交付に先立ち、亡滞納者は請求人に相当程度の高額な金銭を送金しており、その後も生活費として毎月一定額(40万円から50万円)の送金を継続していると指摘。本件金銭交付に係る金員が、将来的には子2人の学資等の原資となるとしても、金銭交付の時点においては学資等として具体的な支払の予定があったとはいえないことからすると、亡滞納者において婚姻費用あるいは生活費及び学資等を負担する必要があったとしても、その前払として金銭交付をすべき必要があったとは認められないとの判断を示した。したがって、審判所は、本件金銭交付は徴収法39条に規定する無償による譲渡に該当するとし、請求人の請求を棄却した。
なお、本件では、滞納国税の徴収不足は本件金銭交付に基因するか否かについても争点となっていたが、審判所は、滞納国税の納付義務を承継した相続財産法人は納付告知処分時において徴収不足であると認められ、本件金銭交付に係る金額は滞納国税の金額を上回ることからすると、滞納国税の徴収不足は本件金銭交付に基因すると判断した。