• 国税不服審判所は令和5年12月13日、未払決算賞与について、口頭の通知では法人税法上の要件を満たさないため当期における損金算入を認めず、また、翌期に交付された通知書の日付に仮装があったことから重加算税を賦課したことは適法との判断を下し、納税者の請求を棄却(関裁(法・諸)令5第14号)。

法人税法上、使用人賞与は(イ)支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全使用人に通知している、(ロ)イで通知した金額を全使用人に対し通知日の属する事業年度終了日の翌日から1月以内に支払っている、(ハ)支給額につき通知日の属する事業年度において損金経理している−−との要件を全て満たすことを条件に、通知日の属する事業年度の損金とすることが認められる(法令72条の3二)。

本件では、決算賞与として給与等の0.5か月分を10月に支給する旨を全社員に通知するよう、社長が当期中(令和3年9月期中の8月17日)に通達した事実が認定されており、請求人(総合建設業等を営む法人)は、同時期にその旨の通知が全社員に口頭でなされたことで、各社員は支給額を確定的に計算できたと主張した。これに対し審判所は、法人税法上の「通知」とは「法人において個々の使用人ごとの具体的な賞与の支給額を最終的、確定的に決定した上、これを使用人に表示すること」との解釈を示した。審判所は、口頭での通知でも法人税法上の通知に当たる余地は否定しなかったものの、それで支給額が確定したというには疑問が残り、実際、請求人が通知を行ったとする時期以降に一部の社員への支給額が変更されていたため、当該通知は法人税法上の要件を満たさず、当期における損金算入は認められないとした。

また、翌期(令和3年10月25日)に交付された通知書には、通知日として当期末(令和3年9月30日)の日付がバックデートで記載されていた。この点について請求人は、通知書は口頭で通知した内容を改めて書面化したものと主張したが、審判所は、請求人の担当者が、口頭での口頭は法人税法上の要件を満たさないとの回答を会計士から事前に得ていたこと等を指摘し、上記通知は当期末に支給額の通知が行われていたかのように装うもので仮装行為に当たるとして、重加算税の賦課も適法とした。

法人税法上の通知要件について同様の解釈を示した先例は複数あるが(東京地判平成27年1月22日等)、重加算税の賦課まで適法と認めた事例は見当たらない。本件は、節税策としての未払決算賞与の損金算入に改めて警鐘を鳴らすものといえよう。