• 東京地裁、借地権相当額を相続時精算課税適用財産として相続税の課税価格に加算すべきと判断(令和7年1月16日判決)。

原告らは、父が所有する土地上に建物を建築するため、平成21年中に父との間で借地権設定契約を締結したが、権利金等の対価を支払うことなく、地代として毎月4万円(平成25年頃からは毎月2万円に減額)を支払ったにとどまった。これにより、原告らは父から本件借地権相当額の経済的利益を受けた。

また原告らは、平成21年11月に、父からそれぞれ現金610万円の贈与を受け、この贈与について相続時精算課税を選択するため、平成22年3月に、平成21年分の贈与税の申告書及び相続時精算課税選択届出書を提出した。原告らは、これにより、平成21年分以後に父から贈与により取得する財産について、相続時精算課税の適用を受けることとなった。

その後、令和元年5月に父が死亡。原告らは、令和2年3月に相続税の申告書を提出したが、本件相続税の課税価格に、相続時精算課税適用財産を加算していなかった。処分行政庁は、原告らに対し、上記現金のほか、本件借地権相当額約2,300万円、満期保険金約500万円及び現金110万円を相続時精算課税適用財産として本件相続税の課税価格に加算する必要がある旨指摘し、修正申告を勧奨したが、原告らは、修正申告に本件借地権相当額を加算しなかったため、相続税の更正処分等を受けた。

東京地裁は、「原告らは、平成21年以後の年である同年中に、対価を支払うことなく本件借地権相当額の経済的利益を受けたことにより、当該経済的利益を贈与により取得したものとみなされる」とし、「本件借地権相当額は、特定贈与者である亡父からの贈与により取得した財産として相続時精算課税の適用を受けるものであって、原告らの贈与税の課税価格の計算の基礎に算入されるものに該当する」との判断を下した。

原告らは、本件借地権相当額の贈与に係る贈与税に対する更正決定等の除斥期間は既に経過していたから、課税処分は違法であるなどと主張したが、東京地裁は、「相続税法21条の15は、相続時精算課税適用財産の範囲について、相続税精算課税制度の適用を受ける財産のうち『当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの』と規定するにとどまり、これを超えて、納税者の申告や税務署長の更正決定等により贈与税の課税価格に算入されたものとは規定していない」などとして、原告らの主張を斥けている。