- 東京地裁、マンション販売事業者の保有期間中空き室だった部分の課税仕入れは課税対応課税仕入れに区分すべきとの主張認めず(令和7年1月24日判決)。
投資用マンションの販売事業者である原告は、原告が建物を保有していた期間中空室だった建物部分の課税仕入れに対応する部分は、課税対応課税仕入れに区分すべきであるなどと主張していた。
東京地裁は、個別対応方式についての規定(消法30②一)は、個々の課税仕入れと個々の資産の譲渡等との対応関係に着目していることからすると、用途区分の判定は課税仕入れごとに行うことを前提としているとの解釈を示した。
その上で、本件各建物は、いずれも区分所有建物ではなく、それぞれ一棟の建物として登記された建物であり、その売買の対象は一棟の建物としての本件各建物であったから、用途区分の判定単位である個々の取引の対象は、本件各建物の個々の居室ではなく、一棟の建物としての本件各建物であるとの考えを示した。そして、原告は、本件各建物を転売目的で購入したものであるが、本件各建物はいずれもその購入時からその一部の居室が住宅として賃貸されており、原告は、賃借人がいる状態で本件各建物を購入し、その後、これを売却するまでの間、その賃料を収受したのであるから、本件各建物取引に係る各課税仕入れは、共通対応課税仕入れに該当すると判断した。
また原告は、原告の保有期間中空室のままで、一切賃料収入が発生しなかった一部の居室に対して行われた工事に係る工事代金については、課税対応課税仕入れに区分すべきとも主張したが、東京地裁は、本件各工事取引の対象となっているのは、区分所有建物における個々の居室ではなく、飽くまで一棟の建物の一部分にすぎない各居室であり、本件各工事取引は、それぞれ一棟の建物を対象にした取引であるとの考えを示した。
そのほか原告は、原告が買主に対して支払った家賃保証は「売上げに係る対価の返還等」(消法28①)に該当するとも主張した。これに対し東京地裁は、投資用マンションであったとしても、賃貸借契約において支払われる賃料は不動産を使用させることの対価であり、不動産の取得とは異なる契約関係に基づくものであるとし、本件各家賃保証特約は、引渡し後の一定の期間、空室が生じた場合に売主が買主の得られなかった収入を一定の範囲で補償するものであって、不動産の代金額を変更するものではないとして、原告の主張を斥けている。