- 宗教団体の名称で行われていた事業から生じた収益が請求人(宗教団体の師)に帰属するか否かが問題となった事案で一部取消裁決。
- 審判所、収益は宗教団体に帰属するとした請求人の主張を斥ける一方で、請求人が収受・費消した証拠がない一部収益については請求人に帰属しないと判断(平成27年3月18日裁決)。
今回紹介する裁決事例では、本件宗教団体の名称で行われていた教室の運営や書籍などの販売に関する各種収入が本件宗教団体の師である請求人に帰属するか否かが最大の争点となった。帰属先が問題となった本件収入は、甲収入(請求人が宗教団体の集いの参加者から受領した収入)、乙収入(宗教団体の書籍、DVDなどの販売による収入)、丙収入(宗教団体に関する教室の受講参加者からの収入)の3つだ。
この3つの収入に関し原処分庁は、本件宗教団体は人格のない社団等に該当しないとしたうえで、請求人が本件宗教団体の名称で行う活動全般について指揮・指導下に置いていたことなどを理由にいずれの収入も請求人に帰属すると主張した。
これに対し請求人は、本件宗教団体は人格のない社団等に該当するため、本件収入は請求人ではなく本件宗教団体に帰属すると主張。また、請求人は、丙収入については、教室の活動は弟子たちが独自に企画・運営する活動で請求人自身がその活動に関与していない点などを指摘したうえで、丙収入は請求人に帰属しないと主張した。
これに対し国税不服審判所は、まず本件宗教団体が人格のない社団等に該当するか否かに関し、①団体としての意思決定の方法が明確に定められていないこと、②代表者や代表選出の方法が明らかでないこと、③本件宗教団体の財産が請求人の個人財産と峻別されていないことから本件宗教団体は人格のない社団等には該当しないと判断した。次に本件収入の帰属先に関し審判所は、甲収入と乙収入については請求人名義の口座に入金・管理されている点やその口座から請求人の生活費が出金されている点などから請求人に帰属すると判断した。一方で、丙収入について審判所は、請求人の指揮・指導下のもとに行われる活動から生じたものであるが、①その収益は教室ごとに決められた担当者の独立採算による運営・管理が基本となっていること(収入は担当者の個人名義口座へ入金)、②請求人が丙収入を収受・費消したことをうかがわせる証拠がないことから請求人に帰属しないと判断。審判所は、丙収入は請求人に帰属するとした原処分庁の主張を斥けた。