- インボイス制度では、事業者に適格請求書の交付・保存を義務付け。仕入税額控除は適格請求書の保存が要件。
- 小売業や飲食業等には記載事項を簡易なものとした制度を措置。
- 適格請求書を発行できない免税事業者からの仕入れは仕入税額控除が不可も、6年間は経過措置あり。
平成29年4月1日から導入予定の消費税の軽減税率制度を導入する際のインボイス制度の概要が明らかとなった。
具体的には、登録番号の指定を受けた課税事業者に対して、事業者から求められた場合には、「適格請求書」の交付・保存を義務付ける。この「適格請求書」とは、登録番号、作成者、受領者、課税資産の譲渡等の時期・内容、適用税率、適用税率別の対価の額の合計額・消費税額等が記載された請求書等のこと。偽りの「適格請求書」を発行した場合には罰則が適用される。
また、不特定多数の者に販売を行う小売業や飲食業、タクシーなどの事業者については、簡易インボイス制度を措置。「適格請求書」の記載事項について、「交付を受ける事業者の氏名又は名称」を省略可能としたほか、「適用税率」あるいは「適用税率毎の消費税額等」のいずれかを記載すればよいこととした。
一方、買い手側は「適格請求書」の保存が仕入税額控除の要件となる。この「適格請求書」だが、課税事業者のみが発行できる仕組みのため、免税事業者からの課税仕入れについては仕入税額控除ができない。ただし、約500万事業者といわれる免税事業者に配慮するため、一定の経過措置を設けている。具体的には、インボイス制度導入後、3年間は仕入税額相当額の80%、その後の3年間は同50%の控除を認める。
とはいっても、買い手側からすると、同じ価格であれば課税事業者から購入した方がより多くの仕入税額控除ができることになる。このため、BtoB取引を主にする事業者であれば、いずれ課税事業者を選択せざるを得ない状況に迫られることになろう。将来的には、少なくとも100万事業者が課税事業者に転換するものと想定されている。
そのほか、納付税額の計算方法では、「適格請求書」に記載のある消費税額の「積上げ計算」だけでなく、これまでと同様、適用税率毎の取引総額に110分の10、108分の8を乗じて計算する「割戻し計算」を認めており、事業者に配慮したものとなっている。ただし、売上税額を「積上げ計算」する場合には、端数処理による益税を防止する観点から仕入税額も「積上げ計算」でなければならない。