• 固定資産税の評価ミスをめぐり、納税者が過納付額相当額の損害賠償を請求した事件で、納税者勝訴(平成28年10月26日判決・確定)。
  • 小規模住宅用地特例の適用を怠った点を違法と判断する一方で、住宅用地等の申告を怠った納税者の過失を指摘。過納付額の8割相当額等(約790万円)の損害賠償を東京都に対して命じる。

相続により本件土地を取得した納税者は、平成16年1月末に建物を建築し、同建物を法人に対し賃貸していた(法人は同建物を介護付き有料老人ホームとして使用している)。

この土地に対し都税事務所は、平成17年度分以降の固定資産税等について小規模住宅用地の特例(200㎡以下の住宅の敷地について固定資産税等の課税標準を6分の1とするもの)を適用せずに、非住宅用地又は一般住宅用地として固定資産税等を賦課する旨を決定。納税者は平成17年度から平成26年度まで固定資産税等を過大に納付していた。

過大納付に気づいた都税事務所は、納税者に対して過去5年分(平成22年度分から平成26年度分)の過納付額約966万円を還付したものの、平成21年度分以前の過納付額については還付を拒否。納税者は、東京都を相手にした民事調停が不成立となったため、平成21年度分以前の過納付額約988万円を請求する訴訟を提起した。

納税者の訴えに対し裁判所は、都税事務所の評価担当職員は小規模住宅用地の所有者からの申告の有無にかかわらず、特例の要件の有無を調査し、同特例の適用がある土地には同特例の基準に従って算出した価格を評価すべき職務上の注意義務を負っているとした。そして本件について裁判所は、本件建物の登記には養護所と記載されていること、外観上多数の住居からなる居住用建物であることが明らかであることなどを踏まえれば、都税事務所の評価担当職員は本件土地に小規模住宅用地の特例を適用すべきことを容易に知ることができたと指摘。固定資産税等の過大な賦課徴収行為は国賠法上、違法であると判断した。

一方で裁判所は、都税条例で義務付けられている住宅用地等の申告を怠った点について、損害の発生及びその増大につき一定程度寄与していると言わざるを得ないから、過失相殺において考慮すべき事情というべきであると指摘。この点を踏まえ裁判所は、納税者が被った過納付金相当額の損害額から2割を過失相殺したうえで、弁護士費用相当額として1割を加算した約790万円の損害賠償を東京都に対して命じた。