- 平成30年度税制改正で、現物分配型スピンオフ税制の拡充を検討へ。
- 現行制度上は、現物分配前の単独新設分社型分割・単独新設現物出資のみが税制適格に該当も、受皿会社に対する親会社事業の吸収分割含め、スピンオフ準備のためのグループ内再編を幅広く税制適格とすることを望む声。
平成29年度税制改正で導入されたスピンオフ税制は、「分割型分割」型と「現物分配」型の組織再編を対象にしているが、このうち現物分配型スピンオフでは、その準備段階で、親会社の事業を子会社として切り出すことが多い。ここで問題になったのが、準備段階における組織再編が税制適格となるための完全支配関係継続要件だ。準備段階における組織再編で設立した子会社の株式を現物分配することが予定されているとなれば、完全支配関係の継続が見込まれているとは言い難い。
そこで平成29年度税制改正では、現物分配型スピンオフの準備段階として親会社の事業を「単独新設分社型分割」あるいは「単独新設現物出資」により子会社として切り出した場合には税制適格再編に該当するとこととされた。すなわち、単独新設分社型分割あるいは単独新設現物出資(以下、単独新設分社型分割等)の後に、その分割承継法人あるいは被現物出資法人(以下、分割承継法人等)の株式を適格株式分配する見込みであったとしても、単独新設分社型分割等の時から適格株式分配の直前まで完全支配関係の継続が見込まれていれば、税制適格再編となる(法令4の3⑥一ハ、法令4の3⑬一ロ)。
もっとも、企業側には、親会社の事業を切り出す手法として、単独新設分社型分割や単独新設現物出資以外のニーズもある。その一つが、まずは親会社が受皿会社となる100%子会社を設立し、そこに親会社の事業を吸収分割により移管させる手法だ。親会社事業の移管に先立ち受皿会社を設立するのは、切り出す事業に必要な免許や許認可を前もって受皿会社に取得させておくため。しかし、上記のとおり、現行法人税法上、現物分配型スピンオフの準備段階の組織再編で税制適格となるのは単独新設分社型分割及び単独新設現物出資に限られる。こうした中、平成30年度税制改正では、受皿会社に事業を移転するための吸収分割を含むグループ内再編を幅広く税制適格とすることが検討される方向。上記受皿会社方式などに対するニーズは実際に存在しているだけに、改正が実現すれば現物分配型スピンオフ税制の利用を検討する企業が一定数出てくることになりそうだ。