- 介護付き有料老人ホーム等の駐車場が特例対象となる「住宅用地」に該当するか否かが争われた事件の控訴審で、納税者が再び勝訴(東京高裁平成29年8月24日判決)。
- 本件駐車場は併用住宅である家屋を維持し又はその効用を果たすために使用される一画地の土地(家屋の敷地)に含まれると判断。住宅用地特例の適用を認める。
本件は、介護付き有料老人ホーム等に付属する駐車場の敷地が固定資産税等の軽減措置である「住宅用地特例」(以下「本件特例」)の適用がある住宅用地に該当するか否かが争われた税務訴訟である。事実関係をみると、納税者は、所有する土地上に建築した家屋(老人ホーム)について、使用目的を「介護付き有料老人ホーム……及びその付属施設としての駐車場」(賃貸借期間は30年)として介護事業などを営むA社に賃貸していた。土地上には駐車場(9箇所)があったものの、老人ホームの入居者のなかには自動車を自ら運転し、駐車場を利用する者はいなかった。都税事務所は、家屋の敷地のうち駐車場以外の部分についてのみ住宅用地(小規模住宅用地)に該当すると判断し、納税者に対して固定資産税等の賦課決定を行った。これに対し納税者は、駐車場を含む土地全体が住宅用地(小規模住宅用地)に該当すると主張して賦課決定の取消しを求める訴えを提起した。
原審の東京地裁はまず、住宅用地に該当するか否かは、土地と住宅の形状や利用状況等を踏まえ社会通念に従い、その土地が住宅を維持し又はその効用を果たすために使用される一画地の土地であるかどうかにより判断すべきとした。そして本件の駐車場については、駐車場とそれ以外の部分に柵等の区分はなく家屋の主な出入口まで接続していること、一部の駐車場に設けられている柵には扉が設けられており、家屋から駐車場まで立ち入り、道路に至ることが可能な状態にあると認定。また、駐車場は契約書により共用施設として来訪者用駐車場として利用し得ること、外部業者等が駐車場として利用することもあるもののその利用は入居者の生活等のためのものでもあることなどを認定した。以上の点などを踏まえ地裁は、本件の駐車場は利用状況に照らし併用住宅としての家屋と一体のものとして利用されている土地であると認めたうえで、駐車場は住宅用地(小規模住宅用地)に該当すると判断した。
地裁判決を不服とした東京都は控訴を提起したものの、東京高裁も地裁判決と同様に本件の駐車場は住宅用地に該当する旨の判決を下している(納税者勝訴で確定)。