• 特定同族会社の留保金課税の適用をめぐり納税者側敗訴(東京地裁平成30年1月16日判決・敗訴した納税者側は控訴を提起)。
  • 地裁、増加した所得が留保金額に当たるか否かは客観的に判断すべき。所得が増加した経緯などを考慮する余地はないと判断。

本件は、パチンコ店の経営等を行う原告法人に対して「特定同族会社の留保金課税制度」を適用することができるか否かが問題となったものである。

事実関係をみると、原告法人の株式は、有限会社である親法人によりすべて保有されており、親法人の株式は原告法人の代表取締役やその親族2名により保有されていた(原告法人は特定同族会社である)。

原告法人は、借受消費税を計上することは誤りであったとして、所轄税務署長に対して更正の請求を行った。また、売上原価を過大に計上し所得金額を過少に申告していたとして法人税の修正申告を行った。

これに対し課税当局は、消費税の減額更正を行う一方で、原告法人に対して特定同族会社の留保金課税制度を適用するなどした法人税の更正処分等を行った。これを不服とした原告法人は、審査請求を行ったものの、国税不服審判所が留保金課税制度の適用を支持する裁決をしたことから、留保金課税の取り消しを求める訴訟を提起した。

原告法人は、事業年度の時点で原告法人が増加所得について相当程度の蓋然性をもって認識することは不可能であったなどと指摘したうえで、その増加所得が「留保した金額」(法法67③)に該当するとはいえないことから、その増加所得分を留保金額に加算した特定同族会社の留保金課税制度の適用は違法であると主張した。

これに対し地裁は、留保金課税の趣旨などに照らすと、本件のように修正申告により所得が増加した場合において増加した所得金額が留保した金額に当たるか否かは客観的に判断すべきであるとした。また、増加した所得金額に相当する現金または預貯金をその同族会社が現実に保有しているか否かや所得が増加した経緯、その同族会社が相当程度の蓋然性をもってその所得の発生を認識し得たか否かを考慮する余地はないというべきであるという判断を示した。

そして本件について地裁は、原告法人は特定同族会社(法法67①)に該当し、留保金額から留保控除額を差し引くと課税留保金額が算出されることなどから、原告法人に対して特定同族会社の留保金課税制度が適用されると結論付けた。