- 納税者(法人)が国税局に対して、納税猶予不許可処分の取り消しを求めた事件で納税者側敗訴(東京地裁平成30年2月28日判決)。
- 純損失が2期連続発生しているのみでは「事業につき著しい損失」(通則法46②四)に該当しないと判断。納税者には納税の猶予に該当する事実は認められず。
納税の猶予の該当事実に関し基本通達46条関係11-2では、基準期間(猶予期間の前々年)で純損失が生じている場合で調査期間(猶予期間の前年)の純損失が基準期間の純損失を超えているときは、猶予該当事実である「事業につき著しい損失を受けた」(通則法46②四)に該当する旨が定められている。滞納国税について納税の猶予を申請した納税者に対し国税局は、調査期間の純損失が基準期間の純損失を超えていないことから、基本通達46条関係11-2の判断基準に該当しないとして納税の猶予の申請を不許可とした。これを不服とした納税者は、裁判のなかで、基準期間と調査期間とで連続して純損失が生じている場合は「事業につき著しい損失を受けた」(通則法46②四)に該当すると解すべきであると主張。また、基本通達46条関係12(2)ニの「売上の著しい減少」や「経費の著しい増加」と同等以上に納税が困難な事情があるといえることから通則法46条2項5号(前各号の類似事実があったこと)に該当すると主張し、納税の猶予の該当事実があるとして不許可処分の取消しを求めた。
裁判所は、通則法46条2項4号が「著しい」損失と限定していることなどを踏まえれば、損失が拡大したことを要するとすることには合理性があることから、損失が連続して発生しているのみで同号に該当すると解すべきとは言えないとした。次に通則法46条2項5号(前各号の類似事実があったこと)に該当するか否かについて裁判所は、基本通達46条関係12(2)の内容(著しい損失の状態が生じたとまでは言えないものの、それに近い純損失の状態が生じる原因となった売上の著しい減少又は経費の著しい増加が生じたことなど)には合理性があるとしたうえで、納税者の基準期間に対する調査期間の売上は若干増加しており、売上原価及び販管費の合計額が若干減少していることから基本通達46条関係12(2)の定めにより通則法46条2項5号に該当する事実は認められないと判断。以上を踏まえ裁判所は、納税者には通則法46条2項4号又は5号に該当する事実は認められないことから、納税の猶予申請の不許可処分は適法であるとした。