- 平成31年度税制改正でストックオプション税制の拡充検討へ。
- 税制適格ストックオプションの付与対象者を兼業者等にまで広げる案のほか、権利行使価額の上限を一気に2倍以上の金額に引き上げる案、権利行使期間を見直す案などが浮上している模様。
- 対象はベンチャー企業のみ。「ベンチャー企業」の定義にも注目。
平成31年度税制改正でストックオプションに係る税制の拡充が検討される方向であることが本誌取材により判明した。具体的には、権利行使時の経済的利益に課税せず株式譲渡時まで課税が繰り延べられることとなる「税制適格ストックオプション」の要件(措法29条の2等)の見直しが検討されることになる。かつてアジア拠点化税制(平成23年改正)で一部特例が時限的に拡充された経緯があるが、久々の議論となる。
複数ある税制適格要件のうち見直しの対象になりそうなものとしてまず挙げられるのが、付与対象者の範囲だ。現行の税制適格ストックオプションにおける付与対象者は、自社の取締役、執行役、使用人等に限られている。ただ、ベンチャー企業では、特に創業~アーリーステージにおいては外部の専門家等のサポートが必要になるケースも多い。そこで平成31年度税制改正では、税制適格ストックオプションの付与対象者に兼業者等を加える案が浮上している。
また、かねてより「インセンティブとしては低すぎる」との指摘が多く聞かれる権利行使価額の上限の引上げもテーマとなりそうだ。現状、税制適格ストックオプションの権利行使価額は「年間1,200万円を超えない」ことが求められているが、これを一気に2倍以上の金額に引き上げることを目指す動きがある。
このほか、現行制度上は「付与決議後2年~10年」とされている権利行使期間の見直しも検討の俎上に載る可能性がありそうだ。
ストックオプションは、株式上場を目指すベンチャー企業のみならず、上場企業においても付与されるケースが少なくないが、平成31年度税制改正で検討されるストックオプション税制の拡充はあくまでも“ベンチャー支援税制”の一つとして位置付けられることになる。したがって、本改正はすべての企業を対象にするものではなく、基本的に「ベンチャー企業」が対象になる点、留意したい。本改正において「ベンチャー企業」がどのように定義されるのか、注目される。