• 滞納者(夫)から預金債権等を無償で譲り受けたとして原処分庁が請求人(妻)に対してした第二次納税義務の納付告知処分の全部を取消す(平成30年1月11日裁決・福裁(諸)平29第4号)。
  • 審判所、不相当に過大な財産分与はその過大部分が無償譲渡等に該当も、請求人が取得した財産の価額は不相当に過大とは言えず。

本件は、請求人(妻)が滞納者(夫)から預金債権等を無償で譲り受けたとして、原処分庁が請求人に対して第二次納税義務を追及していたものである。事実関係をみると、請求人と滞納者は、離婚協議等で滞納者が300万円を受領する旨と離婚後はお互いに金銭要求を行わない旨が記載された合意書等を作成していた。なお、滞納者は、保有していた預金債権と保険契約に係る解約返戻金を請求人に無償で譲り渡していた。この点に着目した原処分庁は、①合意書には財産分与に関する記載がなく離婚後はお互いに金銭要求を行わないことが合意されていたこと、②財産分与について確認したことを証明する具体的な書類等がないことを踏まえると、預金債権等の譲渡は離婚に伴う財産分与とは認められないとして、審査請求のなかで請求人に対する第二次納税義務の納付告知処分は適法であると主張していた。

審判所はまず、離婚協議の際に預金債権等を財産分与として譲渡することについて請求人と滞納者との間で協議又は合意したことを示す書面は見当たらないとした。一方で審判所は、①滞納者は300万円を受領し、離婚届が提出されていること、②合意書には離婚後には金銭要求を行わないことが定められていること、③滞納者は請求人に対して預金債権等の返還を求めておらず、その意思を有していないことを踏まえれば、請求人と滞納者との間で離婚に当たって滞納者は共同形成財産のうち300万円を受けとり、その余は放棄する旨の財産分与の協議が成立したと解するのが相当であるとした。また、預金債権等は離婚に伴う財産分与により滞納者から請求人に譲渡されたものと認めることが相当であるとした。次に審判所は、離婚における財産分与が不相当に過大である場合には、不相当に過大である部分は無償譲渡等(徴収法39条)に該当するとした。本件については、請求人が取得した財産の価額は財産分与相当額を下回ることから不相当に過大とはいえないため、離婚に伴う財産分与について滞納者から請求人に対する無償譲渡があったとは認められないとして、第二次納税義務の納付告知処分の全部を取り消した。