- 従業員が従事するネットオークション事業の収益の帰属先を法人(請求人)と判断(平成30年6月28日裁決・金裁(法・諸)平29-8)。
- 審判所、事業の経緯、業務の遂行状況、業務に係る費用の支払状況、請求人の認識などの事実関係を踏まえ、請求人の業務の一環として行われたものと認める。ネット事業の事業主体は請求人と判断。
本件で問題となっていたのは、インターネットオークションによる商品の出品及び販売に係る業務(以下「本件業務」)の収益が請求人(同族会社)と従業員のどちらに帰属するかという点である。
事実関係をみると、請求人の従業員は、従業員名義でIDを作成したうえで本件業務に従事していた。また、本件業務に係る売上は、本件4口座(従業員名義3件及び請求人代表者の姉名義1件)に入金されていた。なお、その売上や諸経費は請求人の帳簿書類に記載されていなかった。
原処分庁は、本件業務に係る収益は請求人に帰属すると判断したうえで、法人税更正処分に加えて重加算税の賦課決定処分を行った。これを不服とした請求人は、本件業務は従業員の個人事業であるから請求人に収益は帰属しないなどと主張して、更正処分等の取り消しを求めた。
審判所はまず、事業収益の帰属者が誰であるかはその事業の遂行に際して行われる法律行為の名義だけでなく、事業の経緯、業務の遂行状況、業務に係る費用の支払状況及び請求人の認識などの事実関係を総合勘案して、その事業の主体は誰であるかにより判断することになるという法令解釈を示した。そして本件については、従業員が請求人の事務所内で事務及び落札商品の発送を行っていること、請求人が調達して仕入に計上した商品を出品することにより収益を得ていること、一部を除いて従業員の給料が請求人から支払われていること、請求人代表者には本件業務で収益を得ていたとの認識があったことなどを指摘。この点を踏まえ審判所は、本件業務は請求人の業務の一環として行われたものとみるのが相当であり、本件業務の事業主体は請求人であることから本件業務に係る収益は請求人に帰属すると判断した。
また重加算税の可否に関し審判所は、請求人代表者は本件業務で収益を得ていたと認識していたにもかかわらず、本件4口座に入金された本件業務に係る売上を請求人の帳簿書類に記載しないことにより過少申告の結果が発生したものであるから、重加算税の対象となる「隠ぺい」に該当すると判断した。