• 海外金融口座情報の自動的情報交換制度(CRS)が本格的に始動。アジア・欧州など64の国・地域から日本の居住者の海外金融口座情報約55万件を国税庁が入手。課税・徴収分野で活用の方針。
  • CbCR(国別報告事項)による受領情報は移転価格リスクの評価・分析等で活用。交換対象に米国も加わる(初回は平成30年12月末)。

CRS(共通報告基準)に基づく自動的情報交換は、金融機関が保有する非居住者の口座情報(氏名・住所、居住地、口座残高、利子、配当など)を各国の税務当局間で自動的に交換するもの。国税庁によると、10月31日時点で受領した日本の居住者(個人や非上場会社)に関する金融口座情報は64の国・地域から550,705件(アジア・大洋州:290,660件、北米・中南米41,915件、欧州・NIS諸国202,455件、中東・アフリカ15,675件)であった。対象となる金融機関は銀行のほか、証券会社や保険会社などにも及ぶ。国税庁は、受領した金融口座情報を国外送金等調書・国外財産調書・財産債務調書の各調書や独自に収集した情報と併せて分析したうえで、課税・徴収分野で活用する方針だ。

なお、FATCAを採用している米国はCRSの枠組みに入っていない。この点に関し国税庁は、米国にCRS参加を呼びかける一方で、国外送金等調書等や租税条約に基づく情報交換制度等を活用することで対処するとしている。

また、CbCR(国別報告事項)に基づく自動的情報交換は、移転価格税制に係る文書化制度の整備として導入されたもので、特定多国籍企業グループの最終親会社等が税務当局に提出した国別報告事項(子会社の事業活動や収入金額などを記載)を各国の税務当局間で自動的に情報交換するというもの。国税庁によると、10月31日時点で受領したCbCRは海外に所在する最終親会社558社分であった。国税庁は、受領した情報を移転価格リスクの評価や分析等に活用する方針だ(なお、受領した情報を根拠に直接課税が行われることはない)。

国税庁によると、平成30年10月12日に米国内国歳入庁(IRS)との当局間合意が結ばれたことにより、日本との間におけるCbCRの自動的情報交換の対象に米国も加わったことがわかった。

米国との間では、平成28年6月30日以降に開始する会計年度に係るCbCRについて、最終親会社等の会計年度終了の日の翌日から18か月以内に提供するとされていることから、初回の交換は平成30年12月末になる予定だ。