• 個人版事業承継税制は既存の特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例とは選択適用も、被相続人の居住の用に供された宅地等は小規模宅地特例の適用は可能に。
  • 不動産貸付事業は個人版事業承継税制の対象外。ただ、対象となる事業で同税制を適用する一方で、貸付事業用地に小規模宅地特例を適用することは可能な方向。

平成31年度税制改正で創設される個人版事業承継税制は、10年間の限定措置として、事業用宅地や事業用建物などの事業用資産の承継に係る相続税・贈与税を100%納税猶予するもの。相続税に関する納税猶予制度では、認定相続人が平成31年1月1日から平成40年12月31日までの間に相続等により特定事業用資産(被相続人の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた土地及び建物など)を取得したうえで事業を継続していく場合には、その認定相続人が相続すべき相続税のうち相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対応する相続税の納付が100%猶予される。

この個人版事業承継税制は、既存の特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例との選択制である。被相続人(旧経営者)の事業の用に供されていた宅地について個人版事業承継税制による納税猶予の適用を受けている場合には、その事業用宅地について特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例は適用できないことになる。一方で、個人版事業承継税制による納税猶予の適用を受けていた場合であっても、被相続人(旧経営者)の居住の用に供されていた宅地等については、特定居住用宅地等に係る小規模宅地特例の適用は可能とされる方向だ。

ところで、貸付事業の用に供されていた宅地は、個人版事業承継税制の対象外とされている。本誌取材によると、被相続人が個人版事業承継税制の対象となる事業と同税制の対象外である貸付事業を行っている場合には、個人版事業承継税制の対象となる事業は同税制の適用を受けることができる見込み。また、貸付事業の用に供されていた宅地は個人版事業承継税制の適用はできないものの、貸付事業用宅地等に係る小規模宅地特例の適用は可能とされる方向であることがわかった。

なお、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は貸付事業用宅地等に係る小規模宅地特例の適用はできないが(一定の場合を除く)、平成31年度税制改正では、特定事業用宅地等に係る小規模宅地特例もほぼ同様の見直しが実施される。