• 固定資産税等を減免する住宅用地の特例をめぐり、店舗併用住宅の敷地のうち特例対象となる面積を誤って認定した東京都に過納付額全額の支払いを命じる(東京地裁平成30年12月10日判決)。
  • 調査等を尽くすことなく店舗併用住宅のうち居住者専用の階段等を居住部分と認定していなかった都税事務所の注意義務違反を認める。

併用住宅とは、居住部分の床面積が家屋の総床面積の25%以上を占める家屋のことで、その敷地に一定の割合(居住部分が50%未満であれば0.5、50%以上であれば1.0)を乗じた敷地面積が住宅用地の特例(以下「本件特例」)の適用対象となる(地令52条の11②二イ)。

本件で問題となった建物(4階建て)は、1階及び2階の大部分は店舗又は事務所で、3階及び4階部分は納税者とその親族が居住の用に供していた(居住部分の玄関は1階にある)。建物には、1階及び2階部分に居住部分である居住者専用の階段等があった。だが、都税事務所は、その階段等の床面積を考慮すれば居住部分が50%以上であるにもかかわらず、階段等を考慮せずに居住部分を50%未満と認定していた。これにより都税事務所は、建物の敷地面積に0.5を乗じた面積のみを本件特例の適用対象としていた。その後、都税事務所の調査により、建物の居住部分は50%以上で、建物の敷地全体(敷地面積に1.0を乗じた面積)が本件特例の適用対象となることが発覚した。都税事務所は、過去5年分の固定資産税等の過納付額を還付したが、それ以前の15年分の還付には応じなかった。そこで納税者は、15年分の過納付額の支払いを求める国賠訴訟を提起した。

地裁は、都税事務所の担当職員は3階及び4階部分の居住部分に行くためには1階玄関から建物に入り、3階及び4階に至る階段等を使用する必要があることを容易に認識することができたと指摘。建物のうち1階及び2階の床面積の少なくとも一部は居住部分の面積に含まれる可能性があると考えるのが合理的であるとしたうえで、建物の3階及び4階以外に居住部分があるのではないか、その床面積はいくらかを調査すべき端緒があったと指摘した。この点を踏まえ地裁は、都税事務所の担当職員はその調査等を尽くすことなく居住部分を3階及び4階のみと認定して本件特例の適用を誤ったといえるから、固定資産税等の賦課処分の主体として職務上尽くすべき注意義務を尽くしたとはいえないと判断したうえで、15年分の過納付額全額(過失相殺なし)の支払いを東京都に対して命じた。